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2021年6月

2021年6月 8日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第十章 反乱 Ⅲ

第十章 反乱

 ゴードン・オニール率いるアルサフリエニ方面軍が反旗を上げたことは、アルデラーンにいるアレックスの耳にも届いた。
 あまりの衝撃に言葉を失うアレックスだったが、その背景を調べるように通達した。
 やがて、タルシエン要塞から驚きの報告が帰ってきた。
 皇太子即位の儀の後に行われた記者会見のTV放映が、タルシエン要塞及びそこを中継するアルサフリエニ方面では、本放送と生中継放送とではまるで違っていたのだ。
 それが発覚したのは、念のためにアルデラーンで録画した本放送分をタルシエン要塞に送ったことで、違いが判明したのだ。
 アルデラーンでの本放送では、共和国同盟の処遇に関しては、兼ねてよりの意思として、以前の体制に復帰させることで念押ししたはずだった。しかし、中継放送では帝国に併合させると改変させられたことが判明したのだ。
 おそらくタルシエン要塞側の中継設備にハッカーが侵入して、本放送とは違う別の録画映像を流したのであろう。

「やられたな……」
 ハッカーの犯人は分かっている。
 闇の帝王と称される、ジュビロ・カービン以外にはいない。
「久しぶりに聞きましたね。その名前」
「おそらく今日あることを予期して、要塞奪還後のシステム構築の時に、侵入経路の裏口を作っておいたのだな」
「要塞コンピュータの設定に関わらせたのが仇になりましたね」
「分かってはいたのだが、一刻も早いシステム復興が必要だったのだ」
 それは、要塞を落とせば当然再奪取に艦隊を派遣してくるだろうからである。
「ハッカーという奴は、武器商人と同じだよ。どちらか一方にだけ加担するのではなく、不利になった側について戦況を盛り上げ、永遠の膠着状態にさせるのが本望なのだ。双方が疲弊してゆくのを、高見の見物しながら、裏舞台で高笑いする」

「いかがなされますか?」
「そうだな。バーナード星系連邦に最も近いアルサフリエニ方面を放っておくわけにはいかないだろう」
 内憂外患状態にある事を、連邦に悟られるわけにはいかない。
 速やかに鎮圧部隊を派遣しなければならなかった。
「しかし、今の状態では要塞駐留艦隊を動かすわけにはいきませんね」
「私が行く!」

 共和国同盟の士官としてなら、いつどこへ行こうが構わないだろうが、銀河帝国皇太子たるアレックスが、アルサフリエニ方面に進軍するとした時、マーガレット皇女などは大反対した。
 が、皇太子の意思に逆らうわけにはいかない。
「私も同行致します!」
 マーガレットが配下の皇女艦隊を引き連れて、護衛に同行すると許可を求めた。
 ジュリエッタも参加することを公言した。

 こうして、皇太子即位の興奮も冷めやらぬ間に、アルデラーンからタルシエン要塞への行幸となったのである。
 アルデラーンからトランターまでは、それぞれのワープゲートを調整すれば使えるが。
 ジュビロ・カービンが敵側に着いたと想定される現在、タルシエン要塞にあるワープゲートは、万が一を考えて使うことができない。
 トランターからは、艦隊の足を使って行くしかない。


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銀河戦記/鳴動編 第二部 第十章 反乱 Ⅱ

第十章 反乱


 皇太子即位の儀は、アルデラーン宮殿王室礼拝堂大広間で執り行われることとなった。地球史における英国のプリンス・オブ・ウェールズ叙任式にあたる。
 豪華絢爛たる装飾品、正面には祭壇と大きなパイプオルガン、天井には美しい装飾画がある。
 吹き抜けとなっている二階部分には、大きな円柱がありその間隙に各放送局のTVカメラと報道陣がずらりと並んでいる。
「アレクサンダー王子ご入来!」
 宮廷衛視が発令すると、騒めいていた礼拝堂内が一斉に静かになった。
 パイプオルガンが荘厳な音楽を奏でる中、紫紺の絨毯の敷かれた中央回廊をアレクサンダー王子が進みゆく。
 祭壇には、第一皇女にして摂政を務めるエリザベスが待ち受けている。その脇には侍従が携える【皇位継承の証】である深緑に輝くエメラルドの首飾り。
 一般的な王位(皇位)継承では、王冠を継承者に被せる戴冠式が行われるが、銀河帝国では【皇位継承の証】を首に掛けることで、皇位を継承したことを知らしめることとなっている。
 ちなみに地球古代史における日本国の天皇における、立太子の令がこれに相当する。

 その頃、共和国同盟の各地域にも、皇位継承の儀式の模様が生中継されていた。
 当然、ガデラ・カインズの駐留するタルシエン要塞やゴードン・オニールが守るアルサフリエニ方面の基地でも生中継を視聴していた。
「皇帝の即位式じゃなくて、皇太子なんですね」
 参謀のパティー・クレイダー少佐が呟いた。
「そりゃそうさ。死んだと思われていた皇位継承者が突如として現れたのだ。いきなり皇帝というのも、貴族たちが納得しないだろ。まずは皇太子というところからはじめて、少しずつ浸透させてゆくのだろうさ」
「皇太子とは言っても、すでに皇帝が崩御されているから、実質上の皇帝ですよね」
「まあ、そこの所が継承者問題で荒れている証左なんだろうな」

 儀式が終わって、記者会見の模様も中継された。
 数多くのマイクが立ち並んだ机の前に座り、記者の代表質問に答えるアレクサンダー王子。
「殿下は、共和国同盟を解放なされましたが、銀河帝国皇太子として、その処遇をいかがなされるおつもりでございましょうか?」
 その質問は、ほとんど銀河帝国の政策一丁目一番地とも言うべき質問だろう。
 帝国皇太子にして、共和国同盟の最高指導者たる人物なのだ。

「帝国皇太子及び共和国同盟最高指導者たる身分をもって、共和国同盟を銀河帝国に併合し、帝国貴族にその所領を与えるものとする。貴族の末端にまで公正に分配する」
 その発言を聞いて驚く、共和国同盟の諸提督達だった。

「なんてことを!?これでは、バーナード星系連邦から銀河帝国に植民政権が移っただけじゃないか」
 提督の中でも一番憤慨したのは、ゴードン・オニールだった。
 アレックスとは、士官学校からの親友だっただけに、その心変わりに信じられないという表情であった。
 しかし、TV中継では、はっきりと明確に帝国領とすると発言しているのである。疑う余地がなかった。
 アルサフリエニ方面軍において、アレックスに対する反感が沸き上がっていた。


 それから数日を経て、ゴードン・オニールを首班とするアルサフリエニ共和国の独立宣言がなされた。


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