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2020年10月

2020年10月31日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第九章 共和国と帝国 VI

第九章 共和国と帝国
VI

 銀河帝国皇太子として、やるべきことが山積みのアレックス。
 ジュリエッタ皇女の勧めもあって、ひとまず帝国に戻ることにした。
 トランターの事は、ルーミス・コール大佐に任せることにしたのである。

 トランター空港の高官専用発着場に、ジュリエッタ第三皇女専用の連絡艇が駐機してい
る。
 紫紺の絨毯が敷かれている上をアレックスが、その後ろに控えるようにジュリエッタと
マーガレットが歩みゆく。
 その両側に並ぶアレックスの配下の者と、銀河帝国大使以下の職員たち。
 アレックスが、それらの人々に一言二言話しかけながら、タラップに近づいてゆく。
 最前列に並んでいたスザンナ・ベンソンに話しかける。
「済まないが予定通りよろしく頼む」
「はい。指図通りに」
 思惑ぶりな挨拶を交わした後、連絡艇のタラップを上がる。
 やがて勇壮と空へと舞い上がり、宇宙の彼方へと消え去った。

 見送りを終えたスザンナは、踵を返してサラマンダー用連絡艇へと歩いていった。
「出航準備完了しております」
 タラップ入り口で迎えていた副長が報告する。
「よろしい。直ちにタルシエン要塞に向けて出発する」
「はっ!タルシエン要塞ですね」
 指令を復唱するも、意味ありげに口元が綻(ほころ)んでいた。


 帝国首都星アルデラーンへ向かう帝国艦隊。
 とはいっても、ジュリエッタ坐乗の巡洋戦艦インビンシブル、マーガレット坐乗の航空
母艦アーク・ロイヤルを含む総勢200隻ばかりの艦数である。
 遠征艦隊であるがために、いつまでもトランター周辺に留まっていては、食料をはじめ
として駐留経費が莫大になるからである。
 トランターの解放は成功したし、地方では自治領主達の簒奪も起こっている。
 がために、必要最低限の艦艇を残して、帝国へ帰還させていたのである。

 アレックスはインビンシブル艦橋の貴賓席に座っていた。
 ジュリエッタ第三皇女は、その席の側に控えて立っていた。反対側にはパトリシアが。
 銀河帝国の権威第二位である皇太子、皇帝亡き今はアレックスが実質上の最高権威者で
あることには間違いがない。
 上位であるアレックスに席を譲るのは当然であろう。
「定時報告です。只今トランターとアルデラーンとの丁度中間点に到達しました。
「よろしい。そのまま巡行せよ」
 ジュリエッタが応える。

「そろそろかな……」
 と呟いたかと思うと、通信士が報告した。
「共和国から連絡が入りました」
「分かった。こっちの手元に回してくれ」
 手元の通信端末の送受話器を取って会話する。
「ふむ……。分かった、そのままの態勢を続けて、連絡あり次第いつでも行動できるよう
にしておいてくれ」
 というと、送受話器を置いて通信を終了した。

「今の通信は?」
 ジュリエッタが尋ねるが、
「なあに定時報告通信だよ」
 と言葉を濁した。
「この辺りは、連邦軍の残党がまだ残っているはずだ。警戒は怠るなよ」
「御意にございます。索敵機など、十分すぎるくらいに配置しております」
「それなら結構」
 ややあって、通信士が緊張した声で報告する。
「索敵機より入電。前方二時の方向に感あり!」
「識別信号は出しているか?」
 ホレーショ・ネルソン提督が確認する。
「出しておりません。帝国及び共和国同盟の味方信号なし!」
「どうやら、敵と見てよいな。全艦戦闘配備!」
 ネルソン提督がジュリエッタをチラリと見て下令する。
 提督の権限は戦闘準備までは自分の範囲内にあるが、戦闘開始の命令権限はジュリエッ
タにある。

「さておき……。今回の帰還ルートは帝国には?」
「知らせております。中立地帯の手前で、護送艦隊がお迎えに来る手はずになっておりま
す」
「やはりね」
「内通者……ですか?」
「どうやら帝国には、私に生きていてもらっては困る連中がいるようからね」
 摂政派……。
 言葉には出さなかったが、艦橋内にいた者の多くが思い当たることだった。
 二度あることは三度ある。


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2020年10月24日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第九章 共和国と帝国 V

第九章 共和国と帝国

 共和国軍の規定により中将への昇進を果たしたアレックス。
 銀河帝国への帰国を前に、共和国同盟軍の組織編制の大枠を発表した。

「それでは、新人事を発表する。名前を呼ばれた者は前に出てきてパトリシアから任官状
を受け取り給え」

「フランク・ガードナー。貴官を共和国同盟暫定政権軍令部総長及び絶対防衛圏守備艦隊
司令官に任じ、残存艦隊を適時再編成して全軍を統制させる。中将に任命する」
「ありがとうございます」
 と言ってウインクしてから、パトリシアから任官状を受け取って、元の席に戻る。

「ゴードン・オニール」
「はっ!」
 すくっと席を立って、アレックスの前に出る。
「ゴードン。貴官をタルシエン要塞駐留艦隊司令長官に任命し、少将の階級を与える。直
下の独立艦隊を新生第一艦隊として再編成させ配下におく。なお、銀河帝国客員提督とし
て同等の地位と待遇を与える」

 銀河帝国客員提督の地位と待遇には、帝国と同盟を行き来できる自由と、帝国艦隊を動
員できる資格を与えられるということである。

「ガデラ・カインズ」
「はっ」
「カインズ。貴官をアル・サフリエニ方面軍最高司令官に任じ、少将の階級を与える。カ
ラカス基地に第五艦隊、クリーグ基地に第八艦隊、シャイニング基地に第十一艦隊、以上
の三個艦隊を配下に治め、旗艦艦隊として直下の独立艦隊を正式に新生第二艦隊として発
足させる。またゴードンと同様に、銀河帝国客員提督の地位と待遇も与える」
「ガデラ・カインズ、謹んでお受けいたします」

 アレックスの配下となって以来、常にゴードンに先んじられ悔しい思いをしてきたカイ
ンズであるが、同時に少将となりほぼ同等の地位を与えられたのである。
 それを聞いて参謀のパティー・クレイダー少佐が小躍りして喜んだのは言うまでもない。
ゴードンの参謀である同僚のシェリー・バウマン少佐との出世競争がからんでいたからで
もある。彼女もまたカインズと同じ思いをしていたのである。

「リデル・マーカー」
「はっ」
「貴官には、絶対防衛圏守備艦隊艦政本部長としてその内の三分の一を統制していただき
たい。階級は少将です」
「かしこまりました」
 フランク・ガードナーの片腕であるリデル・マーカー准将も順当に昇進を果たした。

「最後に、パトリシアには連合軍統合作戦本部長の任についてもらう。准将として作戦面
での活躍を期待したい」

「ほー」
 という感嘆の声が一斉に漏れた。
 女性将軍がついに誕生したからである。


 新生共和国同盟軍として、今度の人事によりアレックスを筆頭にして、中将二名・少将
三名・准将七名の提督が元解放軍から、順当におさまったのである。
 しかし提督全員が任意退役してしまった旧総督同盟軍百万隻が再編成を待っており、少
なくとも少将三名・准将十四名が空位という勘定となっていた。
 功績点において、准将への昇進点に達している大佐達は、もちろん自分がいずれ艦隊司
令官に任命されているものと信じているはずだった。


 少将昇進点に達しているオーギュスト・チェスター准将だけは、将官で定年まで五年以
内の者は昇進から除外されるという定年期限により現役昇進からはずされて、退役後に名
誉少将を授けられることになった。
「申し訳ありません。出来ればあなたには、もっと働いていただきたかったのですが……
規則には従わなければなりません」
 アレックスは恐縮して、謝った。
「いえ。私は、提督の下で働けた数年間は、武人として誇りに思います。ありがとうござ
いました」
「といっても定年までまだ三年あります。後進の育成も大切な役目です。残りの時間を有
意義に使ってください」
 軍人が出世するには、実力以上に運が伴うことも非常に多い。武勲を独り占めするよう
な上官や、気に入った部下にだけ重要な職務を与えて、気に入らない部下には閑職しか与
えないといった司令官の下にいては、永遠に出世できないことになる。オーギュストも悲
運な武官といえるであろう。
 アレックスが准将となり、トライトンの後を継いで第十七艦隊司令官になった時、軍人
生活の最後の五年間で、アレックスという最上の上官を得て、ついに花開かせて素晴らし
い功績を残し、惜しまれて去っていこうとする。


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2020年10月17日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第九章 共和国と帝国 IV

第九章 共和国と帝国
IV

 共和国同盟軍艦隊統帥総司令本部において、共和国同盟軍と銀河帝国軍双方に対しての
最高司令官たるアレックスは、その一部を帝国軍のために解放して第二皇女艦隊の臨時艦
隊司令本部を設置させた。同胞となったとはいえ別国家の軍隊の司令部が、同じ庁舎に入
居することは本来あり得ないのであるが、アレックスの推し進める連合艦隊構想に基づく
一環として、それぞれの参謀達は反論しなかった。慣例にのっとって別棟舎にすれば無難
かもしれないが、それではことあるごとに最高司令官たるアレックス自らが、いちいち官
舎を移動しなければならなくなる。第二皇女艦隊の参謀達にとっては、皇太子殿下にわざ
わざ足を運ばせることなどできるはずがない。
「トランター駐在帝国大使が、殿下に謁見を願いでておりますが、いかがなさいますか」
「会おう」
「はい、では」
 マーガレット皇女は向き直って従者に伝えた。
「通してよろしい」
「かしこまりました」
 従者が指示を受けて退室し、替わりに銀河帝国大使クジャート・バーミリオンが入場し
てきた。
 デスクの前に立ったかと思うとおもむろに片膝をつき、
「銀河帝国全権大使、クジャート・バーミリオンにございます」
「帝国大使が、いかなる用向きか」
 マーガレット皇女が皇太子であるアレックスに代わって要件を尋ねた。謁見の場合は、
まず重臣がその用向きを皇太子に代わって尋ねるのがしきたりであった。皇太子の判断を
仰がねばならない内容でない限り、重臣がすべて問題を受け答えする。
「は、帝国本星よりの通達事項をお伝えに参りました」
「聞きましょう」
「それではお伝えいたします。銀河帝国皇室議会は、アレクサンダー殿下を銀河帝国皇太
子として、ならびにパトリシア・ウィンザーさまを皇太子妃として、それぞれ正式に承認
いたしました。つきましてはアレクサンダー殿下におかれましては、銀河帝国皇太子とし
て帝国の全権を委譲いたします」
 一同の者が感嘆の声を上げた。
 アレックスとパトリシアは、向き直って見つめあった。
「ご苦労さまでした。下がってよろしい」
「はっ」
 大使はうやうやしく退室した。
「殿下。お聞きになられましたように銀河帝国は、殿下とお妃様を正式に承認いたしまし
た」
 マーガレット皇女が、アレックスに向き直り大使の報告を復唱した。
「それもこれも、マーガレットが尽力をおしまずにやってくれたおかげだ」
「当然のことをしたまででございます。つきましては、銀河帝国へお二人方々、早急にお
戻りになられますことが肝要かと存じます」
「帝国か……いいだろう。明後日に向かうことにしよう」
「かしこまりました。早速、第二艦隊に命じてご帰国の準備をさせます」


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2020年10月10日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第九章 共和国と帝国 Ⅲ


第九章 共和国と帝国

 

 アレックスは統合艦隊総司令部に全幕僚を招集した。また帝国側から、マーガレット皇
女とジュリエッタ皇女、そしてその配下の提督達を呼び寄せていた。
「ところで座ったらどうだい。マーガレット」
 皇太子であるアレックスにたいしては、いかに実の兄妹であろとも最敬礼をつくさねば
ならない。同盟の提督達が着席しているのもかかわらず帝国の諸氏は不動の姿勢で立って
いたのだ。
「いえ。同盟の方々はともかく、我々は銀河帝国の人間です。皇太子殿下の御前において
は着席を許されません。どうぞお気がねなく」
「皇太子といっても、帝国ではまだ正式に承認されていないのではないかな」
「殿下はすでに宇宙艦隊司令長官に任命されております。皇室議会での承認はまだなされ
ておりませんが、これは事実上の皇太子として認められているからであります」
「宇宙艦隊司令長官は皇太子の要職だったな」
「さようにございます」
「私の皇太子の地位はともかく、共和国同盟最高指導者としての地位もあるのだ。そして
ここは共和国同盟下の首都星トランターだ。帝国の法律やしきたりは無用だ」
「ですが……」
「とにかく座ってくれ。こっちが話しずらいじゃないか。トランターにある時は、トラン
ターのしきたりに従ってくれ。最高司令官の依頼と皇太子の命令だ」
「は。ご命令とあらば……」
 皇太子の命令には絶対服従である。仕方なしに着席する帝国の諸氏。
「それよりも、殿下。私共をお呼びになられたのは、いかがな理由でございましょうか」
 マーガレットが尋ねた。
「先の同盟解放戦線では、解放軍と皇女艦隊が連携してことにあたったのだが、これをさ
らに推し進めて、正式に連合艦隊を結成するつもりだ」
「連合艦隊!」
 一同が驚きの声をあげた。
「誤解を招かないように先に念を押しておくが、これは連邦にたいして逆侵略をするため
に結成するのではないということだ。強大な軍事力を背景にして、連邦に容易には軍事行
動を起こせないようにし、平和外交交渉の席についてもらうためである」
「ミリタリーバランスと呼ばれるやつですな」

 

「ところでネルソン提督」
「はっ」
「現在の帝国の正確な艦隊数はどれくらいかな」
「帝国直属の艦隊が四百万隻と、国境警備隊及び公国に与えられた守備艦隊としての百万
隻を合わせて、都合五百万隻ほどになります」
「五百万隻か……だが、五百万隻といっても、同盟・連邦が相次ぐ戦闘で次々と新型艦を
投入してきたのに対し、長年平和に甘んじてきた帝国のものは旧態依然の旧式艦がほとん
どだということだが」
「さようにございます」
「しかも、乗員も戦闘の経験がほとんどないに等しいと。どんなに艦隊数を集めても、旧
式艦と未熟兵ばかりでは戦争には勝てない」
「確かにその通りですが、既存の艦隊を新型艦に切り替えるにも予算と時間が掛かり過ぎ、
また資源的にも短期間では不可能で問題外でありましょう」
「そうだな、不可能なことを論じてもしかたがないだろうが、将兵を再訓練する必要はあ
るだろう。今のままでは帝国軍五百万隻をもってしても、同盟・連邦軍二百万隻にはかな
わないだろうな」
 アレックスの言葉は、すなわち今帝国が同盟ないし連邦と戦争する事態になれば、かな
らず敗れることを断言したことになる。しかしこれまで数倍の敵艦隊にたいして戦いを挑
み勝ち続けてきたアレックスの実績を知るものには、信じて疑いのない重き言葉となって
いた。ネルソンにしても、完璧な布陣で艦隊を率いていたにもかかわらず、十分の一にも
満たない艦数でいとも簡単にマーガレット皇女を奪われてしまった、その実力を目の当た
りにしていては反論する余地もなかった。

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2020年10月 4日 (日)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第九章 共和国と帝国 II

第九章 共和国と帝国
フィッツジェラルド家


 軍事的にも政治的にも、着々と改革を推し進めていくアレックスであったが、どうあが
いてもままならぬ一面があった。
 経済である。
 そしてそれを一手に掌握するフィッツジラルド家とどう対面するかである。
「死の商人」
 と揶揄される一族だった。
 一般市民達は平和であることを望む。
 しかし、武器商人達は平和であっては、飯の種がなくなってしまう。
 次々と最新鋭戦艦を開発生産する大造船所と、死の商人達を傘下に擁する彼らにとって
は、太平天国の世界よりも戦乱動地の世界の方が、居心地がいいはずだ。いずれ彼らの手
によって戦乱の世に導かれていくのは目にみえている。
 たとえばだが……。

 地球日本史において、真珠湾攻撃と呼ばれる奇襲攻撃があったが、米国は事前に察知し
ていた?という陰謀論説がある。
 大日本帝国海軍の真珠湾攻撃を、アメリカ合衆国大統領のフランクリン・ルーズベルト
が、「事前察知をしながらそれをわざと放置した」という説である
 戦争になれば、戦闘機を製造するロッキード・マーチン社やマクドネル・ダグラス社、
、航空母艦ではニューポート・ニューズ造船所などが潤うのだ。
 短期戦では日本に一時的にも追い込まれるだろうが、長期戦に持ち込めれば経済力で日
本に逆転できるとの判断がなされた。

 そういった戦争を望む商人達が、大統領を裏で手を引いていたというのだ。
 ちなみに、幕末に活躍した長崎のトーマス・グラバーも武器商人として来日していた。
 数ある資産家の中でも、その名前を知らぬ者はいないといわれるフィッツジラルド家は、
全銀河の経済覇権を実質上握っていた。共和国同盟内はもちろんのこと、銀河帝国との通
商貿易の九十五パーセントを独占し、連邦側とも闇貿易で通じていると噂されていた。 
 戦時下においては、最も利益を生み出すのが武器の輸出である。そこに暗躍するのが死
の商人と呼ばれる武器輸出業者である。金さえ出してくれれば、敵であろうと誰であろう
と一切関知しない。必要なものを必要なだけ調達して、指定の場所へ運んでやる。
 そしてそれらの死の商人達を影で操っているのが、フィッツジラルド家なのである。

 かつて第二次銀河大戦が勃発し、統一銀河帝国からの分離独立のために立ち上がった、
トランター地方の豪族の中でも最大財閥として、当時の独立軍に対して率先して最新鋭戦
艦の開発援助を行っていたのがフィッツジェラルド家である。

 その総資産は銀河帝国皇室財産をも遥かに凌ぐとも言われており、資本主義経済帝国の
帝王と揶揄されている。
 ことあるごとにランドール提督を目の敵としていた、かのチャールズ・ニールセン中将
もまた彼らの庇護下にあったのだ。
 政治や軍事には直接介入しないが、実力者を懐柔して裏から支配する。

 そんなフィッツジェラルド家の当主が、アレックスに面会を求めてきた。

 トリスタニア共和国は解放されたものの、銀河にはまだ平和は訪れていない。
 バーナード星系連邦との戦争は継続中である。
 そのためにも、軍備の増強も必要であろう。
 あらたなる戦艦の建造は無論のこと、被弾した艦船の修理には彼らの協力を得なければ
ならないことは明白である。
 武器商人との取引も避けては通れないのである。


「アンジェロ・フィッツジェラルドです」
 と名乗った相手は、恰幅のよい体系の50代半ばの男性だった。
 機動戦艦ミネルバを造った造船所を所有している。
 トランターが連邦軍によって陥落された後には、何の躊躇いもなく総督軍にくみして、ミ
ネルバ級2番・3番艦を建造して、メビウス部隊掃討の手助けをした。
 その時々の権力者に媚びへつらって、財力を蓄えて経済面から支配するということだ。
「アレックス・ランドールです」
 差し障りのない挨拶を返す。
「それにしても……。さすがですなあ。総督軍との戦いぶり、じっくりと鑑賞させていた
だきましたよ」
 解放軍及び帝国軍混成艦隊と総督軍との戦いは、TV放映を許可していたから、当然共
和国でも視聴できたということだ。
 それから、軍事や経済に関わる話題が交わされる。
 二時間が経過した。
「どうも長らくお邪魔致しました。今後ともお付き合いよろしく御願いします」
 共和国の軍部最高司令官と、経済界のドンとの会談は終わった。
 何が話されたかは、想像に容易いことだと思われる。


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