銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第六章 新造戦艦サーフェイス Ⅲ
艦内放送があって、アイクとジャンが呼び出された。
艦載機発着場に急行した二人に出撃命令が下された。
「おまえら二人に出撃命令が出たぞ」
サブリナ中尉が指令を伝達する。
「待ってたぜ!ただの訓練じゃ腕が鈍っていたんだ」
「生意気を言うんじゃない。油断をすれば死ぬんだからな」
ナイジェル中尉がたしなめる。
「へいへい」
生返事をするアイク。
「前に乗れ、パイロットだ。わたしらは、ナビゲーターとして後ろに乗る。搭乗しろ!」
と機体を指差すサブリナ。
「パイロットとは……。ふふん、腕が鳴るぜ」
言いながら新型機の操縦席に乗り込むアイク。
傍らのナイジェルの方も搭乗が完了した。
「起動してみろ」
後部座席のサブリナからの指示がでる。
「へいよ。起動!」
スイッチを入れるが反応がなかった。
「あれ?」
「馬鹿もん!起動ディスクが入ってない」
「あ、そうか」
旧式モビルスーツは、起動ディスクというものはなく、本体内ROMにシステムのすべてが内臓されていた。
有体に言えば、一般の自動車に乗る時キーを入れてエンジンをかけハンドルを握れば、誰でも自動車を乗りこなすことができる、それと同じである。
新型は起動システムと行動学習記憶をディスクに記録するようになっている。戦闘における行動パターンを記憶学習して、今後の戦闘に活かせるようになっている。パイロットの成長と共に、新型も成長することができるというわけだ。
「ほれ、ディスクだ」
起動ディスクをアイクに手渡すサブリナ。
「はいよ……ってか、試したのか?」
ディスクがないのを承知で、起動してみろと指示したのだから。
「気にするな。早く起動しろ!」
「ちぇっ」
ぶつぶつ言いながらも、ディスクを挿入してシステムを起動する。
画面が次々と切り替わって、起動画面が表示される。
「正面スクリーン、右・左スクリーン、後方すべて正常にクリアー!」
アイクが戦闘用の機器の確認を続けると、
「超伝導磁気浮上システム正常に作動中!」
機関要員にしてナビゲーター役のサブリナも対応する。
「出撃準備完了!」
すぐさま艦橋に伝えられる。
「総員出撃体制整いました」
オペレーターが報告する。
「よろしい。順次出撃させてください」
まずは戦闘機編隊が、先に発着艦口から出撃してゆく。
一方のミサイルサイト側からも戦闘機が迎撃に出てきた。
本来なら密かにじっとしているのが本筋だろうが、存在を知られて破壊工作に出られては、動くしかないだろう。
砂漠の各所に発着口が開いて、戦闘機が出てくる。
ミサイルサイト上空での空中戦が始まる。
「サブリナ機、ナイジェル機、出撃してください」
新型モビルスーツにも出撃命令が出される。
「出撃だ!」
サブリナが叫ぶ。
「アイク、行きまーす!」
アイクが呼応する。
飛翔型の新型がふわりと空中に浮かびながら、ゆっくりと下降してゆく。
浮上システムを運用・監視しているのはサブリナである。
「着地する」
「はいよ」
と、足を踏ん張るようにして、地面に着地した。
「さてと、出入り口は?」
アイクの質問に、
「右方向十二度、六十メートルだ。砂に埋もれている。ブラスター砲で砂を吹き飛ばせ」
レーダー手を兼ねるサブリナが答える。
「了解」
ブラスター砲を構えて、ぶっ放す。
砂塵を巻き上げて、入り口が姿を現す。
遅れてナイジェル達が到着する。
「遅かったじゃないか」
アイクが訊ねると、
「出た途端、強風に煽られたんだよ」
ジャンが言い訳ともとれる返事をした。
「そういうことにしておくさ」
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