あっと!ヴィーナス!!第四章 part-1
あっと! ヴィーナス!!
第四章 part-1 「さて、みなさん。恒例というか自己紹介をお願いしますね。出席番号順にしましょう」 と言いながら出席簿を広げた。 出席順だったら、弘美は相川だからいつも一番に呼ばれるはずだった。 しかし……。 「相田康平君」 「はい」 と呼ばれて立ち上がる相田君。 はーっ……、とため息をつく弘美。 どうやら男子から女子の欄に出席を移行してあるみたい。 ヴィーナスに手抜かりなしか。 やがて男子が終わって、女子の番となった。 「相川弘美さん」 やっぱりね……。 ちょっと悪戯してみたくなった。 「俺の名前は相川弘美だ。つい昨日の朝まで男をやっていた。こんなことになったのはそ こにいる女神奇麗とか言う教師のせいだ。実は信じられないだろうが、ヴィーナスという 女神で男から女の子にされてしまった……」 とここまで言いかけて異様な雰囲気を感じて、言葉を飲み込んだ。 自分の声以外何も聞こえないのだ。 生徒達のざわめき、運動場からの体育の掛け声、窓際に茂っている木々の風にそよぐ音。 一切が消えていた。 しかも教室を見回してみると、生徒達さえも動きを止めていたのだ。 鼻くそをほじくっている生徒。 背中がかゆいのかシャツの襟から手を突っ込んでいる生徒。 髪の毛の手入れに余念がない生徒。 あくびをして大きく口を開け、手で隠している生徒。 みんな固まったまま微塵も動かない。 自分のまわりだけが時間が止まっていた。 すべてヴィーナスのせいか?

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