あっと!ヴィーナス!!第三章 part-2
あっと!ヴィーナス!!
第三章 part-2 下へ降りると、みんなの視線が一斉に集中する。 「おはよう、弘美ちゃん」 挨拶もほとんど同時だった。 「う、うん。おはよう……」 「その制服似合ってるよ」 「あ、ありがとう」 自分の席に着く。 「じゃあ、遅れるから行かなくちゃ」 と立ち上がる信一郎兄さん。 「あ、俺も」 そして異口同音に、 「じゃあ、弘美ちゃん。行ってくるね」 ああ、勝手に行って頂戴。 とは思ったが、 「いってらっしゃい」 と可愛く答える弘美だった。 わざわざ手を振って出かけていく兄さん達。 「父さんは?」 「昨日早く帰ってきたでしょ。だから今日は早めに出勤してやり残したことをかたずける そうよ」 「そんなだったら、早く帰ってくることもなかったのに。母さんが教えたんでしょ」 「お父さんも女の子が欲しかった人ですからね。一刻も早く知らせてあげようと連絡した のよ。そしたら速攻で帰ってきちゃったわ。よほど早く逢いたかったのね。だから理解し てあげてね。それから、父さん母さんじゃなくて、お父さんお母さんと、『お』をつけて 呼びなさいね。女の子なんだから」 「お、お母さん? って呼べばいいわけね」 逆らってもしようがないので、素直に言うことを聞いてあげよう。 「そうよ」 言いながら、ご飯と味噌汁をよそってくれる。 「はい、どうぞ。良く噛んで食べなさいよ」 良く噛んで……だなんて今まで、一度だって言ったことがないのに……。 言葉遣いもやさしいし。 それに引き替え、まるで反対の態度なのが武司兄さんだ。 上の三人の兄と違って、朝から一言も口を開いていない。部屋を追い出されたのが気に 触ったのかなあ……。 「それから武司には途中まで同じ道だから、一緒に学校まで送ってもらうことにしたよ」 ああ……どうりで、ぶすっとしているわけね。

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