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2019年3月21日 (木)

性転換倶楽部/特務捜査官レディー 追跡(R15+指定)

特務捜査官レディー
(響子そして/サイドストーリー)

(三十九)追跡

 それから勧誘員の運転する自動車に乗って、そのスタジオへと向かった。
 もちろん捜査員と別れて、わたしと勧誘員の二人だけである。
 わたしを陥れようとしているのに、邪魔なこぶ付きを許すわけがない。
 後部座席に腰掛けているわたしを、ルームミラーでちらちらと眺めながら車を走ら
せる勧誘員だった。

 その頃、敬は……。
 勧誘員の自動車を着かず離れず、後ろから追いかけていた。
 女性の運転する自動車の助手席に陣取っている敬。
「見失わないで下さいよ」
「大丈夫ですよ。これをご覧下さい」
 という女性の指差すところには、車載ナビゲーターがあった。
 GPSと連動して、自動車の位置をリアルタイムで地図上に表示する装置である。
「赤い点滅がこの車で、青い点滅が真樹さんです」
 ナビゲーターに表示された地図に、赤い点滅と青い点滅が明滅していた。
「発信機ですよね。いつの間に取り付けたんですか?」
「取り付けたんじゃない。真樹の身体に装着してあるんだ」
 後ろの座席から、黒沢医師が顔を出して答える。
 黒沢も、真樹のことが心配で囮捜査のバックアップ部隊に参加してきているのであ
った。
「装着? 以前、真樹が髪飾りがどうのとか言ってましたけど……」
 と敬が尋ねると、
「それは真樹君の体内に埋め込んだ発信機からの信号だよ」
 黒沢医師が答えた。
「発信機を身体の中に埋め込んだんですか!?」
「そう驚くことはないだろう。埋め込んだとは言ってもメスを入れたんじゃんない。
女性には男性にはない隠し場所があるだろ?」
「え?」
 一瞬首を傾げる敬だったが、
「あ……。ああ、そういう事ですか。判りました」
 と納得する。
「髪飾りだと外れることがあるし、何かにぶつかって壊れることもあるからな。彼女
のために、万が一を考えて妊娠しないようにとIUDを装着してやった。それに発信
機がついているのだよ。本人には内緒だがね」
 妊娠しないようにか……。
 その言葉を聞いて、言い知れぬ不快感を覚える敬だった。
 覚醒剤密売の組織の本拠地を探り、売春婦として無理矢理捉えられている女性を解
放するために、囮捜査で潜入することを、自ら志願したとはいえ……。
 将来を誓い合った恋人してはやり切れないものがあった。

「にしても……。こんなスーパーカーで出張ってくるなんて。目立ちすぎはしません
かね?」
 敬が運転席の女性に話しかける。
 敬たちが追跡に使っている車は、そんじょそこらにあるような車ではなかった。世
界有数の企業グループである篠崎重工が四百周年記念に十台限定生産で発売した、篠
崎重工製「erika-markII スーパーエンジェル」という七千万円はするかという代物
だった。
 それを所有しているのが、かつて敬が所属していた特殊傭兵部隊を傘下にしていた
セキュリティーシステムズco.ltdの統括運営母体、世界最大財閥の真条寺家。その所
有のスーパーカーであった。
「仕方がありませんよ。真樹さんの発信機からの電波を受信できるのは、お嬢さまの
ファントムVIと、麗華さまのこの車に搭載したこのナビゲーターしかないんですか
ら」
 と答える運転席の女性は、真条寺家のメイドの神田美智子。
 麗華とは、美智子がお嬢さまと呼んだ真条寺財閥総帥である真条寺梓、その執権代
理人こと竜崎麗華のことである。
 警察によって殉職したとして戸籍を抹消されたはずの敬が、パスポートなしで日本
に入国できたのは、この竜崎麗華のおかげである。
 自動車が止まった。
「どうやら芸能プロダクションとやらに着いたようです」
 ナビゲーターの点滅が、先ほどから動かなくなっていた。
 どこかの駐車場にでも入ったのだろう。
「どのマンションですか」
「マンションじゃなくて、いわゆる雑居ビルですね。ナビゲーターにビルの全体像を
投影してみましょう」
 美智子が捜査すると、ナビゲーターにビルが映し出された。
 ○○金融、ビデオレンタル……、というような看板や窓ガラスの大きな広告が目立
つビルで、狭い敷地一杯に建てられていた。しかし、その映像はどう見ても上空から
俯瞰したものであった。
「この映像はどこから撮影しているのですか?」
「衛星軌道上の『azusa5号A』という資源探査気象衛星からです」
「衛星からですか?」
「ええ、5号B機に世代交代して引退したものを、今回の捜査のために利用させてもら
っています」
「衛星からの映像を自由に扱えるなんて、さすがに真条寺財閥ですね。いっそのこと
その財力で覚醒剤密売や売春組織も壊滅してくれれば、世のため人のためになるとい
うものを」
 敬が呟くように言うと、黒沢医師がそれに答える。
「光があれば闇もあるものだ。相反するものではあるが、必要でないようにみえて実
は必要という事もある。例えば人間の腸に寄生する、腸内細菌は栄養をかすめとる一
見悪者のように見えるが、ビフィズス菌や乳酸菌のように悪玉菌の繁殖を抑えること
をやっている善玉菌もいる。また太陽から吹き寄せる太陽風エネルギーは、強烈な放
射線を伴っていて人間は数秒とて生きてはいられないが、その太陽風がバリヤーとな
ってもっと光速で高エネルギーな外宇宙からの宇宙線を遮断している。そういう場合
もあるということさ」
「はあ……。難しくて判りません」
 正直に感想を述べる敬だった。
「もっと判りやすくいえばだ。闇の臓器売買組織を考えてみてくれ。裏の誘拐団組織
が殺した人間から臓器を摘出し、臓器売買の世界に臓器を流している。確かに極悪非
道の世界かも知れないが、その反面臓器移植で助かる人間もいるし、臓器移植の技術
や臓器長期保存の技術も革新的に進歩してきている」
「あのう……。確かにそうかも知れませんが、覚醒剤や人身売買で苦しんでいる人の
気持ちはどうなるのですか? それでいいんですか? 高次元なレベルじゃなくて、
もっと身近なレベルで考えてくださいよ。我々は警察官です。人が苦しんでいる。そ
れを助けるのが任務なのですから」
「あははは……。確かにそうだ。えらい!」
 とぽんと敬の肩を叩いて笑い出す黒沢医師だった。
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