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2019年1月 9日 (水)

性転換倶楽部/特務捜査官レディー 新しい朝(R15+指定)

特務捜査官レディー(R15+指定)
(響子そして/サイドストーリー)

(十二)新しい朝  翌日は頭が痛かった。  真樹は酒に弱い事が改めて判明した。母が警告していたはずだが、一度飲みはじめ ると止められない性格だった。  以前の自分ならあれくらい何でもないのだが、今の自分の内臓は真樹のものだ。そ れもアルコール分解に関わる肝臓は、その処理能力が低い、つまり下戸に近いという ことだった。  しくじったな……。  ふと時計を見ると丁度午前六時だった。 「あ! いけない!」  ゆっくり寝ているわけにはいかない。  昨日の母との会話から、真樹が食事の手伝いをさせられている事に気づいていたか らだ。朝食の支度を手伝わなければいけなかった。  朝食は父親の出社時間に合わせて早めに取るらしかった。  ベッドを飛び降り、パジャマを脱いで大急ぎで着替えると台所へ向かった。  すでに母は起きて朝食の用意をしていた。 「おはようございます。お母さん」 「おはよう。お寝坊さんね、真樹は」 「すみません。今手伝います」 「飲み過ぎるからですよ。エプロンはそっちに掛かっているわ」  指差した先の食器棚のそばの衣紋掛けにエプロンが掛かっていた。それを被って準 備を整えると炊事にかかった。 「お味噌汁を作ってくれるかしら。わたしは煮魚と他のもの作ってるから」 「はい。わかりました」  味噌汁は食事の基本である。それを任せるのは、真樹の料理の腕を見てみようとい うことであった。すでに昨日、夕食の味噌汁を食べている。斎藤家の味噌汁の味を出 せるかどうか、どれだけ近づけられるかを試されているのだ。もちろん真樹が男性だ ったとは露も知らず、女性なら味噌汁くらい作れるだろうという判断だし、朝早く起 きて手伝いにきたのだから当然できると思っている。真樹にしたって料理ができるか ら手伝いに起きてきたのだ。  冷蔵庫を開けてみると、味噌汁の具として豆腐としじみがあった。昨日、スーパー で買ってきたものだ。 「しじみの味噌汁でいいわね」  こんぶと鰹節でダシを取ることにする。  こんぶは水から煮出しをはじめ、鰹節は頃合を見計らってすぐに上げられるように ストレーナーを使う。しじみからも旨味成分が出てくるので、それを考慮に入れてい る。次にしじみを入れ、味噌を味噌漉しを使って入れる。  豆腐をきざんで味噌汁の中に落としこんでいく。  やがて味噌汁のいい香りが漂いはじめる。  味見をしてみる。 「こんなものかしら」  だいたい出来上がったようだ。  火を消す前に、 「お母さん、味見をお願いします?」  念のために母にみてもらうことにした。 「どれ、みせて」  小皿に味噌汁をすくって味を見ている母。 「ちょっと味が薄いようだけど、はじめてにしては上出来よ」 「ありがとうございます」  火を消してコンロから降ろし、鍋敷きを敷いた食卓の上に置いた。そしてすぐさま コンロの周囲の汚れを布巾できれいに落とす。冷めて固まると落としにくくなるし、 後からだとついつい億劫になってそのまま放置がちになってしまうからだ。 「あなた料理上手ね。まさかこんぶと鰹節でダシを取るところからはじめるなんて思 いもしなかったわ。適当に味の素で味付けするかと思ったのにね。コンロの汚れもす ぐに落としていたし、あなたのお母さんに教えられたの?」 「はい。母がいつも作るところを手伝っていましたから」  それは本当のことだった。  料理好きだった母から料理の基本から教えこまれた。母は、真樹(薫)が性別不適 合者として女性の心を持っていると理解してくれていて、女性としてのたしなみを徹 底的に教え込んてくれていたのだ。炊事・洗濯・掃除からはじまって、立ち居振る舞 いから化粧方法まで丁寧に教えてくれたのだ。 「これだと、わたしが教えることはないわね。あなたのお母さんに感謝しなくちゃ。 後は斎藤家の味に近づけるだけね。お父さんの味覚は保守的で、ちょっと味が変わっ ただけでも味噌汁を残しちゃうの」 「はい、教えてください。努力します」 「まあ、真樹さんが直接造った料理だったら、文句言わずに全部食べてくれるだろう けど、やはり長年食べ慣れた味じゃないとやっぱりね……」 「あたしもそう思います」
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