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2019年1月11日 (金)

性転換倶楽部/特務捜査官レディー 狙撃手(R15+指定)

特務捜査官レディー・特別編
(響子そして/サイドストーリー)

(六)狙撃手(スナイパー)  とあるビルの屋上。  一人の男が、背に負っていた長尺のケースから、ライフルを取り出し眼下のビルの 谷間にその銃口を構えた。いかにもスナイパーという風貌だ。  H&K社製MSG90(狙撃銃)  同社製のG3の技術を流用して開発された超高性能にして超高価なPSG1の廉価 版である。湾岸戦争において米国のデルタフォースなどの特殊部隊が使用していたこ とで有名である。射撃性能はPSG1とほぼ同等に1.7kgの減量に成功した。街中を 隠し持って歩くにはちょうど良い。  狙撃目標は、ビルとビルの谷間を縫った僅かな間隙の先にあるニューヨーク市警本 部の玄関先。数人の部下を引き連れて市警本部長が出てくる。  スコープを覗いていた男が、焦点を正確に合わせるためにサングラスを外した。そ の顔は死線を何度も掻い潜り、精悍な鋭い目つきをしていたが、まさしく沢渡敬だっ た。 「薫はいずれ性転換し、戸籍性別変更の手続きを踏んで女性になるはずだった。そし て俺はその薫と晴れて結婚するつもりだった。俺と薫の幸せな将来を踏みにじったお まえの罪は重大だ。死んで薫に謝罪しろ!」  引き金を引く敬。  発射された弾丸は一直線に進み、市警本部長の眉間を撃ち抜いた。  血飛沫をあげて倒れる本部長、駆け寄るSP達の慌てふためく姿が、スコープを通 して見える。  命中を確認した敬は、ライフルをケースに戻し、排莢された空薬莢を拾ってポケッ トに収めると、しずかにその場を立ち去って行った。  帰国してからほぼ半年が過ぎ去っていた。  やさしい母、理解のある父親。  真樹として、両親は温かく迎えてくれた。  何不自由なく幸せな日々が続いている。  両親は、真樹の薫だった過去を聞きだそうとはせずに、そっとしておいてあげよう というやさしい性格を持っていた。両親は薫が当然女性だと思っているし、真樹も告 白できないでいるのだが、もし移植された以外の臓器、元々の薫自身の組織のDNA を調べられれば男性だったことが知られて、一悶着となっているに違いない。騙し続 けることになるのだが、だからといって今更どうすることもできない。過去はどうあ れ現在は女性の何者でもないし、両親の血を引いた子供を産む事で、親孝行して返せ ばいいと考えていた。  真樹は薬科大学に在学していたから、成り代わって自分が女子大生として通学をは じめて勉強することとなった。薬科大学での授業に対して、何の知識もなく当初は苦 労の連続だったが、持ち前の気力と根性で猛勉強し授業に付いていけるようになった。  友達もできた。もちろん女性だ。
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