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2018年12月 7日 (金)

性転換倶楽部/ある日突然に III イリュージョン

性転換倶楽部/ある日突然に III

(七)イリュージョン  ここは私の父親が経営する産婦人科病院のICU(集中治療室)監視モニター室。  ベッドの上で、調教師に犯されている柿崎が映っている。  しかしその映像は、実はイリュージョンなのだ。  調教師に犯されるビデオ映像を、柿崎の意識が宿ったかの女性の脳に送り込んでい るのだ。  復讐のために柿崎の脳細胞を移植して、女性を生き返らせても、その身体をして売 春行為を強要しては、本末転倒というものである。あくまで女性の身体は女性のもの だ。それを汚す行為はしたくはなかった。  イリュージョンを使って、柿崎の意識だけを洗脳することが目的だ。  柿崎にこれまで自分が行ってきたことを悔い改めさせる精神治療。  やがて数週間が過ぎた。  柿崎の脳神経はすっかり女性の身体と融合して、一個の個体として機能しはじめて いた。昏睡状態から回復して、意識が戻ってきたのである。  柿崎が目を覚ました。  まだ少し朦朧としているのか、天井をじっと見つめたままだ。 「どうだね、気分は?」  その声のする方に顔を向ける柿崎。 「あなたは?」 「医者だよ」 「医者!?」  はっとなって自分の身体を確認しようと起き上がろうとするが、まだ身体の自由が きかないでいる柿崎。 「あ……」  めまいを起こしたのだろう、そのまま伏してしまう。 「まだ完全に機能を回復していないんだ。しばらく動かない方がいいぞ。これから質 問するが、正直に答えてくれたまえ。君の記憶にあることでいい」  それは彼の脳細胞が正常に機能し、記憶をとどめているかを判断するためだった。 「君の名前と年齢、性別は?」 「柿崎直人、二十六歳。男です」 「出身地は?」 「埼玉県」  まずは基本的なところから尋ねていく。 「……それでは、つい最近のことを聞こうか」 「た、助けて下さい。売春宿に捕らえられているんです」 「売春宿とは?」 「何人もの男性の相手をさせられて、何度も妊娠と中絶を繰り返して……何度も、何 度も……。い、いやだ。もう二度とあそこには戻りたくない」  完全にイリュージョンを実際の体験として記憶しているようであった。これほど効 果があるとは。 「安心しなさい。ここは売春宿じゃないから。君は、もう自由なんだ」 「自由……。ほ、ほんとですか?」 「そうだ。だから気を落ち着けて。今日は、ここで休みなさい。精神安定剤を打って あげよう」 「は、はい」 「最後に一言。君の名前は、桜井真菜美。市内の女子高校に通う十六歳の女の子だ。 覚えておいてくれ」 「桜井真菜美? そうか、それが名前なんだ」 「そうだ。君は、桜井真菜美として生まれ変わったんだよ」 「生まれ変わった……」 「まあ、ゆっくり養生したまえ」  あまり興奮させると、移植した脳細胞の機能に支障が起きるかも知れない。とりあ えずこれくらいにして休ませることにする。  毎日少しずつ精神のハビリを続けるとしよう。  それから数週間が過ぎた。  精神リハビリのかいあって、すっかり落ち着いてきた彼女。  身体と脳神経細胞の融合も進んで、自由に歩けるようになっていた。 「先生、おはようございます」  廊下で会えば必ず挨拶を交わしてくる。 「うん。すっかり元気になったようだね」 「はい。先生のおかげです」 「真菜美ちゃん! こんな所にいたんだ。病室にいないから探しちゃったわよ」  と声を掛けてきたのは、三人娘の一人。  実は、三人娘に一部始終を話して、真菜美についての女性教育をお願いしていたの だ。 「あ、由香里お姉さん」 「真菜美ちゃんの大好きな、ブロンディーのチーズクリームケーキ持ってきてあげた よ」 「ほんと?」 「冷たいうちに早くいただきましょう」 「うん!」  いそいそと病室に戻る二人。  その後ろ姿を見つめながら感慨深い心境になる。  イリュージョンによる矯正と、三人娘による精神教育により、真菜美は女性として の人生を一歩ずつ確実に歩みはじめている。  先の三人娘と違って、真菜美の意識は男性そのものだったはずだが、意外にも早く 女性的な感情を見せている。実に不思議だが、もしかしたら身体の持ち主だった女の 子の魂が残存していて、今まさに復活しようとして、柿崎の意識とも融合をはじめ、 一個の精神体として再生を果たしたのかもしれない。  桜井真菜美、十六歳。  四人姉妹の末っ子として、上のお姉さん達に可愛がられながら、幸せな日々を送っ ている。  私は、そう信じたい。 了
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