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2018年12月 5日 (水)

性転換倶楽部/ある日突然に III 人体実験/脳移植

性転換倶楽部/ある日突然に III

(六)人体実験/脳移植  とある地下施設。  裏組織と闇の臓器密売組織が共同運営している闇の病院である。  遺体からの臓器の摘出や、怪我をした組織員の治療(特に弾丸の摘出が多い)や、 性転換手術などが行われている。  手術台に乗せられた柿崎。  すでに麻酔をかけられ、人工呼吸器と極低体温から仮死状態にするための冷却装置 に繋がれている。  何せ人間の臓器の中で、最も大量に酸素と栄養素を消費するのが脳細胞だ。特にぶ どう糖などはその大半がまず脳に送られるという。ほんの数秒でも血流がとだえれば 障害を残すし、血糖値が一定以下になると昏睡状態になるというデリケートな臓器だ。 例え眠っていても心臓や肺を動かす為に、脳は活動を続けている。そのために完全に 脳の機能を一時的に停止、つまり仮死状態にしなければならないのだ。 「先生、手術の準備完了しました」  看護婦が伝えて来た。  地下施設とはいえちゃんとした病院だから、当然看護婦はいるし、手術のための麻 酔医もいる。  もちろん手術器械は最新設備が揃っている。  そして呼び寄せた脳神経外科医も来ている。 「そっちの患者の状況は、どうかね」 「はい、良好です。ばっちりいけますよ」  隣の手術台には、あの日以来ずっと人工心肺装置に繋がれたままの、あの被害者が 横たわっている。特別集中治療室で、いわゆる脳死状態を維持しながら、今日のこの 日のために生きながらえていたのだ。ただ子宮内にあった胎児は摘出してある。 「でも、こんな手術。脳組織をそっくり入れ替える手術なんてはじめてです」  助手の医師が身震いしている。  彼は私の下で、ごく普通の性転換手術しか担当したことがない。  生きた人間に対しての人体実験がはじまる。  男性の脳組織を移植して女性を生き返らせるという、前代未聞の大手術。  男性は確実に死に、例え女性が生き返っても男性の脳を持つことになる。  一体何の為に行うのか?  スタッフもそのことには気づいているはずだが反問するものはいない。詮索する事 は、ここではご法度だ。言われた事を言われたままに実行する事が、組織内で長生き するこつということを知っているからである。それに世紀の大手術を見守りたいとい う科学者魂もある。 「よし! では、オペを開始する」  柿崎を担当する医師団と、被害者を担当する医師団とに分かれて、同時に脳細胞組 織の移植が開始された。  柿崎側では、血流を跡絶えさせないように、人工血管を繋いでから、慎重に血管を 切断するという作業が繰り返される。続いて、脳神経細胞の摘出にかかる。  一方の女性側では、壊死した脳細胞の除去と、移植される脳組織に繋がる血管の結 合準備が施されていく。  ちょっとでも神経細胞を傷つければ障害が残る。慎重に慎重を重ねながらメスを入 れて行く。  脳神経細胞には、白血球やT細胞などによる抗体抗原反応、いわゆる一般的な免疫 反応は起きない。そもそも体幹から脳に入る血液から白血球などが侵入しないような 機能が存在するからだ。  脳神経細胞は、グリア細胞の一種である「ミクログリア」というものを内在してお りこれが脳内の免疫を担っている。ミクログリアは突起を伸ばしながら、神経細胞に 異常がないかを監視し、腫瘍細胞などがあればこれを駆除し、傷んだニューロンを修 復する促進作用を持っている。また死んでしまった細胞などの清掃も行う。  一方で、腫瘍細胞などを殺すために放出するサイトカインやタンパク質分解酵素の 異常分泌によって、アルツハイマー型認知症を引き起こすことも解明が進んでいる。  手術は十二時間にも及ぶ長期決戦となった。 「よし。いいぞ、完了した」  ついに柿崎の脳組織が摘出された。  すぐさま被害者担当の医師に引き継がれる。  摘出した手順の逆をたどって被害者の頭部に脳細胞が移植されてゆく。  そして、神経細胞増殖・再生促進剤の投与。本来切れた神経細胞は再生しないが、 それを可能にする、我が製薬会社自慢の魔法の秘薬だ。もちろん切れた箇所だけでな く、シノプス同士の結合促進も促す効果もある。  副作用がひどく医薬品の承認を受けられないでいた。 「よし、これで移植した脳神経細胞と末端神経細胞も繋がり、脳死状態から脱却でき るだろう」  こうして世紀の大手術は成功した。後は回復を待つだけだ。 「みなさん、ご苦労様でした」 「いやあ、こちらこそ貴重な体験をさせてもらった。ありがとう」  表の世界では絶対に不可能な脳移植手術。おそらくこれを逃したら二度と来ないだ ろう、手術の腕を試す最後のチャンスなのだ。全員が持てる技術と知識のすべてを出 してことに当たってくれたからこそ成功に至ったのだ。  一方の脳神経組織を摘出された柿崎は、待機していた臓器摘出担当医によって次々 と肝臓や腎臓などが摘出され、一塊の肉片へと姿を変えていた。  こうして柿崎直人という人間がこの世から姿を消した。  そしてその意識は女性の身体に宿って、新たなる生命の誕生となったのである。
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