妖奇退魔夜行/蘇我入鹿の怨霊 其の拾陸
陰陽退魔士・逢坂蘭子/蘇我入鹿の怨霊 其の拾陸
(拾陸)奈良県警綿貫警視 事件現場に到着する。 物々しい雰囲気の中、現場検証が執り行われている。 その中にあって、忙しく指図する人物がおり、現場責任者だと思われる。 野次馬を掛け分けて、その人物に近づく井上課長。 「よお、おまえが担当か」 「なんだ、井上か」 馴れ馴れしい挨拶を交わしているところをみると、どうやら顔なじみらしい。 大阪府警と奈良県警では交流の機会はないだろうが。 「研修以来だな」 国家公務員採用Ⅰ種試験合格者(キャリア)で警察庁に採用された者が、警部補に任 命された際に初任幹部科研修が行われる警察大学校の同期生というところか。 蘭子に気が付いて、 「その娘は?」 「ああ、私の臨時助手だよ」 「見たところ高校生くらいのようだが……」 「学校側には許可を取っている」 「やはり高校生か、大丈夫なんだろうな」 「それは保証する。その辺の刑事より役に立つよ」 というところで、お互いに紹介しあう。 「奈良県警刑事部捜査第一課の綿貫警視です」 「摂津土御門流派の陰陽師、逢坂蘭子です」 「陰陽師?君がか!?」 さすがに驚くのも無理がない。 奈良県警本部。 連続殺人事件特別捜査本部が設置され、捜査本部長には県警本部長が任命され、副本 部長・事件主任官・広報担当官・捜査班運営主任官・捜査班長・捜査班員という編成で 運営されることとなった。 なお一段下の「捜査本部」の捜査本部長は、県警本部長が任命する。 綿貫警視は捜査班運営主任官として、事実上の捜査責任者となった。 井上課長も応援要員として誘われたが、自身の大阪府警の捜査責任者でもあるので、 配下の警部補なりを向かわせることで落ち着いた。 「他県の者から指示命令されるのがウザいか?」 とは綿貫の弁である。 井上課長としては、蘭子との協力捜査に力を入れており、科学捜査が基本の奈良県警 とは一線を画す必要があるからである。 まずは捜査線上に上っている石上直弘は、写真と共に公開指名手配となった。

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