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2018年11月28日 (水)

性転換倶楽部/ある日当然に III とあるバーにて

女性化短編小説集/ある日突然に III

(三)とあるバーにて  ここは、とあるバーである。  柿崎が日頃から良く来店していることは調査済みである。  そして、私の組織とも繋がりのある店でもある。  組織の口利きで、オーナーに許可を取って店の裏口から入店する。  柿崎とはグルになっているマスターには内緒である。  そして、製薬会社受付嬢の倉本里美と渡部由香里も同伴である。  店内を監視できる奥の事務所に陣取り、防犯カメラをチェックする。  店内では、囮となることを自ら志願した磯部響子がいる。  やがて柿崎が入店し、目ざとく響子に近づいていく。  響子の隣の席に腰を降ろし、馴れ馴れしく話し掛ける柿崎。 「ねえ、君。もしかして、待ち人が来ないのかな」 「え? ええ、まあ……」 「君のような美人を放っておくなんて酷い男だな」 (どっちが酷いんだか……) 「どうだい? 今夜は、この僕と付き合わないかい?」 「そうね。それもいいかも知れないわね」 「よっしゃあ。僕達の出会いに乾杯しよう」  と言いながらマスターに合図を送った。 「どうやら、マティーニを作っているみたい。口当たりはいいけど、結構度数が高い のよね」  ニューハーフ・バーに勤めていただけに酒の事は良く知っている里美が言った。 「あ! 今、マスター、何か錠剤のようなもの入れなかった?」 「見えたわ。きっと睡眠薬よ。やはりマスターもグルなのね」 「あれ? マスターはあたし達が来てること知らないの?」 「ああ、実はマスターが共犯者というのは気づいていた。だからマスターには内緒に している」 「どうりで、マスターに会わないように、営業時間中に裏口からこっそり入ったのね。 鍵はオーナーから預かったの?」 「そうだ。この店は普段からマスター一人で切り盛りしている。他の誰かがいると警 戒して、本性を現わさないだろう。一応ここと店内は防音されているから、私達が入 ってきたのには気づかない」 「でもさあ……睡眠薬を飲まされてぐっすり眠り込んだままホテルに連れ込まれて、 目覚めた時には事が済んでいた。ということにならないかしら」 「大丈夫だ。響子君には催眠剤を中和する薬を飲んで貰っている」 「中和剤? そんなものがあるの?」 「私の経営しているのは製薬会社だ。どんな薬だって作ろうと思えば作れる。女性ホ ルモンや避妊薬はもちろんのこと、睡眠薬だって作っているし、それの効果を無効に してしまう中和剤もな」 「へえ。さすが製薬会社の社長さん」 「馬鹿にしちゃいけない」 「はい、はい」  響子の前にマティーニが出された。  事前に睡眠薬入りの酒が出されるかもしれないから、と注意はしているが、飲まな ければ物事は進展しない。あえて策略にはまることも肝要だ。  薬が入っている事を承知でマティーニに口をつける響子。  にやりとほくそえむ柿崎。  数分後。 「あら……どうしたのかしら……急に眠気が……」  ぱたりとカウンターに伏してしまう響子。 「うまくいきましたね」  マスターが響子が完全に眠っていることを確認しながら言った。 「ああ、じゃあ、これ」  と言いながら、財布を取り出していくらかの金を渡す柿崎。 「いつも済みませんねえ」  金を受け取りポケットにしまうマスター。  よいしょっとばかりに響子を起こして肩に担ぐ柿崎。  そして店の外へと出て行く。 「あ、響子さんを連れ出しますよ」 「よし! 後を追うぞ。マスターに気づかれないように静かに出るんだ」 「先生。SDカードを忘れちゃだめですよ。証拠物件になるんだから」  ビデオデッキからSDカードを取り出して新しいカードをセットする里美。 「おお、そうだったな。持ってきてくれ」 「はい」  店に出た響子と柿崎。  介抱するような感じで、響子の手を肩で抱えるようして、自分の車の方へと向かう 柿崎。  車のドアを開けて助手席に響子を座らせて、自分は運転席へ。  スカートから覗く響子の膝をひとしきり撫でてから、 「これからいい所へ案内するよ」  と、エンジンを掛けて車を発車させた。  夢見る気分で、後方から私たちがつけてきているのにも気づかないようだ。
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