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2018年10月10日 (水)

性転換倶楽部/ある日突然に I page-5

女性化短編小説集「ある日突然に」より I

page-5  ヒップにぴったりとフィットしたタイトスカートにハイヒールを履いていては、歩 きづらくてしようがありませんでした。何度も躓きそうになります。  すれ違う人々のほとんどがこっちを見つめているようでした。 「恥ずかしいよ……」  女装した……いや、女装とは言えないでしょう。今は完全な女性の身体になってい るのですから。  ともかく女性の容姿で街を歩く事などはじめての経験です。  他人の視線が気になってしようがありませんでした。  まともに前を向いて歩けません。  カップルの男女がすれ違った後に、背後でいさかいの声が届きます。 「どこ見てんのよ!」 「な、なに言ってんだよ」 「とぼけないでよ。あのきれいな女の子に見とれていたくせに」  確かに視線がこちらに向けられているのは確かでしたが、どうやら私のことを一人 の美しい女性として認識しての反応であることが、次第に判ってきました。  少し自信がついてきました。  その矢先のことでした。 「あ、あれは?」  会社の同僚達が前から歩いてくるではありませんか。  どうやら昼食で会社から出てきたところらしい。 「ど、どうしよう……」  くるりと引き返して逃げようかと思いました。  しかし、今後も知り合いと出会う事は頻繁に起こりうることです。  その度に逃げ回っていては、真の女性には成りきれません。  医師やブティックの店員が念押ししたように、これからは一生を女性として生きて いかなければならないのです。  これは女性として生き抜くための最初の試練なのかもしれない。  気がつかなければそれで良し。  ばれたらばれたで、女性に性転換したことを正直に告白しよう。  MtFなどの性同一性障害が次第に認知され、性別再判定手術が正式に行われる時 代になりつつあります。彼らもそれなりに理解してくれるかもしれません。  なるようになるしかない。  意を決し、しっかりと前を向いて、彼らとすれ違いました。  当然の如く彼らの視線がこちらを見つめているようでした。  わたしは、あくまで知らんぷりして足早に通り過ぎていきます。 「おい。なんで声を掛けなかったんだよ? あんな可愛い子、放っておくおまえじゃ ないだろう」 「ああ……見惚れていて、つい声を掛けるチャンスを失った」 「確かにな」  そんな声が背後から聞こえてきました。 「どうやら気づかれなかったみたいね」  女性ホルモンによって女性化した顔に化粧をしているのですから気づかれないのも 当然のことでした。  わたしは、ほっとすると同時に、彼らや先のカップルの男性のように、美しい女性 に見惚れて呆然と立ち尽くす姿を想像して、何か言い知れぬ快感のようなものを覚え ていました。  女性ホルモンは、より魅力的な完全な女性に変身させてしまっていることを確信し ました。もう何も恥ずかしがる事はありません。しっかりと姿勢を正して前を向いて 歩いていきましょう。  そして目指す面接を受ける会社に到着したのでした。  受付けに紹介状を提示すると、 「連絡は受け賜っております。人事部長他の面接担当者が、あなたをお待ちしており ました。どうぞ面接会場へご案内いたします」  といって一人の受付嬢が先に立って歩きだしました。 「やけに手回しがいいわね……ああ、そうか。期日は今日のこの時間と指定されてい たのだから、そのためのセッティングも済んでいるというわけね。でも、たった一人 の面接にこんなに早く面接担当者が揃う事なんてあるのかしら?」  疑心暗鬼でした。
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