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2018年10月 8日 (月)

性転換倶楽部/ある日突然に I page-4

女性化短編小説集「ある日突然に」より I

page-4  地図に記された場所は、わたしの会社のそばに広がる商店街の中にあるようでした。 「ここか……?」  そこは一階がしゃれたデザインの婦人服売り場で、二階がランジェリーショップと なっているようでした。  リクルートスーツを新調するために来たのですが……。  確かに下着からスーツに至るまで、一揃いの女性衣料が購入できそうでしたが、入 店するには相当の覚悟がいりました。  婦人服売り場をきょろきょろしていると、物腰のよい店員が声をかけてきました。 「あの、倉本里美さんではございませんか?」 「え? あ。は、はい」 「先生からお電話を頂いております。どうぞ奥へ」  店員に案内された先は、鏡のついたドレッサーが並んだ化粧室のようでした。 「こ、ここは?」 「どうぞお座りください」 「何をするのですか?」 「お化粧ですよ。すっぴんのお顔で面接は受けられませんでしょう」 「しかし化粧は……したことないし」 「会社に就職したいと思っていらっしゃのでしょう?」 「そ、それはそうですが」 「なら、私達の言う通りになさってください。悪いようには致しませんから」  そして店員は耳元で囁きました。 「いいですか、あなたはもう元には戻れないのですよ。今日からは、女性として生き るしかないのです。化粧は女性のたしなみの一つですよ」  その店員は、医師からすべての事情を聞いて知っているようでした。 「さあ、私達にまかせてね」  やさしい声で諭されてしまいます。そして店員を呼び寄せて、数人がかりでわたし の顔に化粧を施しはじめたのでした。  いきなり眉を剃刀で剃られました。 「女性の眉は細いですからね。後で眉を描きますからね」  さらに顔全体に広がっている産毛も剃っていきました。  女性ホルモンのおかげで男性特有の濃い髭などはすっかり消え失せていましたが、 産毛が残っており、化粧のりにひびく邪魔なものなのです。  そして、下地クリームからはじまってファンデーション、頬紅……。  入念に化粧が施されていきました。  女性の化粧って、こんなにも手が掛かるのか?  すでに三十分以上が経過して、改めて認識しました。  化粧の間にもう一人の女性が手際良く髪の毛をセットしていました。普段から少し 長めにしていた髪ですが、それをショートカールにして整えていきます。 「はい! 出来上がりよ」  と改めて鏡をのぞくと、本物以上に本物らしい女性の顔をした自分の姿がありまし た。真っ赤なルージュの口元がいやに艶めかしいです。きれいにカールされ整えられ た髪と、その耳元には小さなピアスが輝いています。どうやら手術の合間にピアス孔 の処置がなされていたようです。 「じゃあ、今度は服装ね。まずはランジェリーからよ」  化粧をしているうちに準備されたのか、女性衣料の乗せられたワゴンが持ち込まれ ていました。  ここはブティックとランジェリーショップです。必要な衣料はすべて揃っています。 「じゃあ、まずはランジェリーからね。サイズは合ってると思うわ」  といいながらピンクのブラジャーを手に取りました。 「ほら、これ可愛いでしょう。着けてあげるわね」  あっけに取られているうちに、着ている服を身ぐるみ脱がされ、裸になった身体に ブラジャーが着けられました。正しいブラジャーの着け方の説明を受けながら。  注射によって大きく膨らんだ胸がブラジャーのカップの中にきれいにおさまります。 何ともいいがたい感情が湧いてきていました。 「な、なんか変。気持ちがいい……」  女性だけが着用する事のできるブラジャー。動く度にふるふると揺れてしようがな かった大きな胸をしっかりとカップで支えています。乳首が衣服に擦れて痛くなると いうこともないでしょう。  さらにお揃いのショーツ、そしてガーターベルトとストッキングと履かされていき ます。 「いいでしょ。男性を魅惑する悩殺下着よ」  ドレッサーの脇にある全身を映すことのできる大きな鏡の前に移動させられて、全 身像を見せつけられる。 「それじゃあ、次はお洋服の番ね」 「会社訪問にふさわしいリクルートスーツを用意したわ」  それはバイオレット色のミニのタイトスカートにブレザーのスーツでした。  大きめのヒップを包み込んでキュートなタイトスカート。しゃれた透かし編みの施 されたベアトップがその豊かな胸を覆い隠しつつも、その存在をアピールしています。 そしてベアトップが覗けるように大きく胸元が開いたブレザー。 「良く似合っているわよ」  最後のとどめは、スーツと同色のハイヒールの靴でした。 「はい、これで完璧よ」  女性の必需品である化粧セットなどの入ったショルダーバックを渡されました。 「ほんと可愛らしいわ。とっても素敵よ」 「どこかのご令嬢みたいです」  鏡に向かいます。  どこか幼さを残しながらもお嬢さまといった雰囲気の女性が立っていました。 「これが、わたし……」  自分が女性である事を再認識せずにはおれませんでした。 「それじゃあ、行ってらっしゃい。頑張るのよ」  という励ましの声に送られてそのブティックを後にしたのでした。
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