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2018年10月12日 (金)

性転換倶楽部/ある日突然に I page-6

女性化短編小説集「ある日突然に」より I

page-6  面接官5名と自分との、ごく普通の面接であった。 「以上で一次面接を終わります。続いて二次面接を受けて下さい。先程の受付けの者 がご案内します」  二次面接があるのね。 「ありがとうございました」  深々とあいさつして、その面接会場を退室すると、扉の外で先程の受付嬢が待ち受 けていました。 「それでは、二次面接会場へご案内致します」  長い廊下を渡り次ぎなる面接会場へと向かう受付嬢とわたし。ふたりの女性の履い ているハイヒールの足音が、乾いた廊下に響きます。 「こちらでございます」  立ち止まったドアには、社長室という豪華なプレートが貼られていました。 「二次面接は、社長直々に面接いたします」  といってドアをノックしました。 「入りたまえ」  中から返答があって、ドアを開けわたしを社長室に通す受付嬢。 「社長。紹介を受けた面接希望の方をお連れしました」  その人物は豪華な椅子に座って背を向けたまま答えました。 「わかった。君は下がってよろしい」 「かしこまりました」  深々と礼をすると、受付嬢はわたしを残して部屋を退室していきました。 「紹介状を持ってきたそうだね」  背を向けたまま社長が質問します。 「はい」  その声には、どこかで聞き覚えがありました。  何度となく日常的に聞いていたはずの声。  ……しかしまさかそんなはずはない……  しかし、次の言葉で決定的なものとなったのです。 「その紹介状は誰が書いてくれたのかね」  え、うそ。やっぱり間違いない。あの産婦人科の医師の声。  椅子がくるりと回って、その人物が顔を見せました。 「ああ! あなたは?」  やっぱりそうでした。 「驚いたようだね。私がこの医薬メーカーの社長だよ。あの病院は父が経営している ものだ。一応医師免状を持っているので時々手伝っているが、こっちが本業だよ」 「まあ、ソファーに腰を降ろして、私の説明を聞きたまえ」  といいながらわたしに来客用のソファーに座るように指示しました。 「君に、商店街にあるあの店に立ち寄らせたのは、女性として生きる決心をしたこと を確認するためだよ。女性衣料専門店に入るには、あの時の君なら相当の勇気がいっ たはずだよね。普通の男性なら、買い物しても彼女への贈り物ということにすれば何 とか言い分けがたつけど、胸が膨らんでいる身じゃ、当然それは自分自身が着るもの と、店員に判ってしまうからね。何とかその関門をパスしても、しっかり化粧を施さ れ、女性の衣服を着てすっかり女性の容姿になった君は、商店街を歩いて会社までた どり着かなければならないという次の試練が待ち受けている。昼食時間帯の商店街だ、 人通りはひっきりなしで絶える事がないし、見知った人物に出会うとも限らない。そ んな中を女性の姿で歩いた経験のない君がどうするか知りたかったのだよ」  ドアがノックされて先程の受付嬢が、お茶を運んできたので、話しが一時中断しま した。お茶をそれぞれの前に静かに置いた後、一礼して退室しようとする彼女を、社 長が呼び止めます。 「ああ、君も残っていてくれないか」 「はい。かしこまりました」  彼女は、お茶を運んできたトレーを、ウェイトレスがするように正面で両手で軽く 抱えるようにして、ソファーのそばで立ったまま待機しました。  こんな意味慎重なる会話の中に、彼女を同席させるなんて不思議でした。  社長は、話しを続けます。 「ま、こうして面接を受けにきた事をみると、その試練も無事パスしたようだね。君 には悪いと思ったが、従業員にあの店から後をつけさせてもらった。人通りを避けて 裏通りを通らないかと監視するためにね。が、君はまっすぐ商店街を抜けて会社まで 歩いてきたようだ。その報告によると、最初のうちは下を向いておどおどしていたが、 やがてしっかり前を向いて歩きはじめたとある。どうだね」 「はい、その通りです。はじめのうちは、とても前を向いて歩けませんでした。しか し、そうこするうちに、わたしを見つめるその視線が女性にたいするものと判りまし た。そうしたら自信がついてきて、前を向いて歩けるようになりました」
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