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2018年9月 7日 (金)

性転換倶楽部/ドラキュラ X (十)そして……

(十)そして……

「わあ! 眩しいわ」
 外へ出た彼女の第一声だった。
「でも、気持ちいいわ」
 女性としてはじめて外へ出たのだ。
 両手を大きく広げて深呼吸をしている。
 たんたんたん。
 と、足取り軽く階段を降りていく彼女。
 ハイヒールを履いているというのに、ぎごちなさはまるでなく、実に様になってい
る。
 歩き方も身のこなし方も完璧な女性の動きだった。

 近くの公園を二人でそぞろ歩く。
「ねえ……聞いていい?」
 少し声を低め耳元で囁くように尋ねる。
「男だったあたしに抱かれた時の気持ちってどんな感じだった?」
 な、何を言い出すかと思ったら……。
「ねえ、はじめてだったんでしょ?」
 当たり前じゃない。
 後にも先にもあれが最初だよ。
 あ、つまり男性の時と女性の時との両方を意味してる。男性としての経験はなかっ
た。
「そんなの覚えていないわ。無我夢中だったから」
「なんだ……。でも、誘ってきたのはあなたの方よ。覚えていないの?」
 そう言われても……。
 あの時の精神状態は正常ではなかった。
 何かに憑りつかれたような気分だった。
「まあ、いいわ。どうせ、あたしもいずれは経験することだしね」
 え?
 それは、ちょっと待ってくれない。
 自分やあたしに起こったことを思い出してよ。
 そんなことをすれば……。
「あ! ソフトクリーム売ってる」
 売店に立ち寄る。
「おじさん。ソフトクリーム二つ、頂戴!」
「あいよ! バニラしかないけど構わないよね」
「いいわよ。それ二つ」
 後ろを振り向いてソフトクリームマシンから、三角状のウェハーコーンに取り出し
てくる。
「へい、おまち! 280円だよ」
「ありがとう。はい、280円ね」
 可愛らしい財布から280円を取り出して店員に渡している。
 あんな財布、どこで買ったの?
 たぶん以前から持っていたのであろうが……。

 ベンチに腰掛けて、ソフトクリームを頬張る二人。
 その時、若い男性が二人、わたし達に近づいてきた。
「君たち、二人だけ?」
 つまり誰かと待ち合わせしていないかと間接的に聞いているのだ。
「二人きりよ」
 彼女が愛想うよく答える。
「だったら、これから僕達とどこかに遊びに行かない?」
「そうそう、車も持ってるからさ」
 いわゆる軟派である。
「いいわよ」
 即答で彼女が答えた。
 ちょ、ちょっと!
「よっしゃあ! 決まり、ダブルデートしよう」
「わたしも?」
「何、恥ずかしがっているのよ。相手は二人、こちらも二人。心配いらないわよ」
 そんなことを言っているんじゃない。
 それにどうせ気がついたら相手の男性と二人きりという状況になってるはずだ。
「さあさあ、行きましょう」
 積極的にわたしをも誘い込む彼女だった。
「もう……。どうなっても知らないからね」
 立ち上がって、ダブルデートに参加することにするわたしだった。

 そう……。
 どうなっても知らないよ。

ドラキュラ X 了
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