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2018年9月26日 (水)

性転換倶楽部/静香の一日(八)その時

 静香の一日

(八)その時 「ちょっと! 待ったあ!!」  突然。  玄関の方で叫び声がした。  なんだ?  声のした方を見やると……。 「お兄ちゃん! なにやってるのよ」  そこには息を荒げた重雄が立っていたのである。  いや違った。  重雄の姿をした、たぶん……静香なのだろう。  鍵を掛けていなかったのか?  俊彦のどあほう!  これから、しようという時に……。  鍵ぐらい掛けておけよ。 「あたしが気絶しているのをいいことに、好き勝手なことされたらたまらないわ」 「お、おまえ。自分がどういう状況なのか判っているのか?」 「判りすぎるくらいに判っているわよ。お兄ちゃんとあたしが入れ替わってしまった ことをね」 「し、しかし。どうやって、ここが判ったのだ。知らないはずだろう」 「それくらい、判るわよ。元々その身体はあたしのもの。意識を集中すれば、どこで 何をしているか判るのよ。テレパシーね。それをたどってここを嗅ぎつけたわけよ」 「嘘を言うな。それだったら、俺にだっておまえのことが判ってもいいだろう。後を 付けている事など、少しも感じなかったぞ」 「それはお兄ちゃんが、こんな風なよこしまな気持ちを抱いていたからよ」  それもそうかも知れない。  静香は精神集中して自分の身体のことを念じていたのに、こっちは俊彦とやること ばかりしか考えていなかった。  その違いが現れたようである。 「とにかく、あたしの身体を返してよ」  と言われてもなあ……。  階段から転げ落ちてこうなってしまったのだ。  性転換機とかで精神を入れ替えたと言うのなら元に戻せるかも知れないが、奇跡と いうか偶然だったのだ。  返せと言われても手段が判るはずもない。  正直に訳を話して聞かせてやる。 「ほ、本当に知らないの? お兄ちゃんが何かして、入れ替わったんじゃないの?」 「知るわけないだろ」 「性転換薬とかを飲ませたのじゃないの?」 「そんな便利なものがあったら、製薬会社を起こして一儲けしているよ」 「ほんとに偶然なの?」 「何度も言わせるなよ」 「じゃあ、じゃあ。一生、このままということもある?」 「十分ありうるな」 「お兄ちゃんはなんとも思わないの?」 「なってしまったものはしようがないしなあ……。俊彦と結婚できるならそれもいい かも知れないと考えていたところだ」 「そ、そんなこと……」  おっと、俊彦の名前が出て、一人蚊帳の外にしていたことを忘れていた。  静香が来てしまった限りには、正直に話すしかないだろう。  その当の本人は……。  ぽかんと口を開けた状態で呆けていた。 「済まん、俊彦」  頭を下げて謝るしかなかった。 「わけを話してくれ。俺にはなにがなんだか、さっぱり訳が判らない」  そりゃそうだろうな。  いざこれならいいことをしようとしていた寸前に、兄である重雄こと本物の静香が やってきて、入れ替わりだの身体を返せなどと口論をはじめたのだから。  訳を話して聞かせてやる。 「そうか……。今までの静香は、重雄だったのか。どうりで……」  それだけ言うと、暗く押し黙ってしまった。  プロポーズを受け入れてくれて、その寸前までいったのが、実は親友である重雄の 策謀だった。 「す、済まない。本当に、悪かった。しかし、それもこれもおまえと静香の将来を思 ってのことだった」  すべては俊彦のためにやったこと。  それだけは信じてもらいたかった。  本当に悪気はなかったのだ。  しかし……。  俊彦を裏切り、その心を弄んでいたとも言えないだろう。 「悪いが、帰ってくれないか……」  重苦しい声で一言。  何をも拒絶する言葉だった。  これ以上、ここにいれば俊彦を苦しめるだけだ。  ともかく、しばらくは冷却期間を置くしかないだろう。  もしかしたら、これは永久の友との別れになるかも知れないが、すべては自分の責 任である。 「判った……」  床に散らばる下着やスーツを拾い集めて再び着込み、黙って俊彦の部屋を退出した。  言い訳はしない。
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