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2018年8月18日 (土)

妖奇退魔夜行/蘇我入鹿の怨霊 其の肆

陰陽退魔士・逢坂蘭子/蘇我入鹿の怨霊 其の肆(土曜劇場)

(肆)辻斬り  夜の帳(とばり)が舞い降り、闇に包まれる街角。  道行く人の往来もほとんどない物静かな丑三つ時。  丑の刻とは、方位での鬼門である艮(ごん・うしとら)に入る時刻を指し、鬼門が開き 鬼や死者が現れる時間とされる。  そんな闇に隠れるようにして、怪しい影が蠢く。  右手に携えたキラリと光る切れ物から滴り落ちる鮮血。  その足元には、バッサリと切られたばかりの女性の死体。  夜が明ける。  赤色灯を点滅させたパトカーが、街の一角を占拠している。  一帯の交通規制が敷かれ、黄色いテープで周囲を立ち入り禁止にして証拠や痕跡を保護 する現場保存をする。  鑑識員が現場の写真撮影や状況の記録や計測、痕跡の保存を行っている。  そこへ覆面パトカーが到着し、一人の刑事が降り立つ。  大阪府警捜査第一課長、井上警視である。  被害者に覆いかぶされたシートを捲って、 「辻斬りか……」  遺体を検分する。  肩から胸元にかけてバッサリと明らかに刀で切られと思われる痛々しい傷。  何度見ても見慣れることのない永遠のトラウマである。  年の頃17・8歳というところか。 「これで何人目だ?」 「四人目です」 「凶器は?」 「まだ見つかっておりません」 「探せ!」 「はっ!」 「被害者の身元は分かっているのか」 「はい。阿倍野女子高等学校の生徒手帳を所持していました。美樹本明美。死亡推定時刻 は午前二時半頃だそうです」 「高校生が真夜中を出歩いていたということか?」 「クラブ活動で遅くなったのではないでしょうか」 「そんな時間までか?ご両親に連絡はしたか」 「連絡してあります」 「そうか……」 「遺体を運び出してよろしいでしょうか」 「ああ、たのむ」 「司法解剖に回しますか?」 「いや、とりあえずご両親の了解待ちだ」  明らかなる殺人事件と確認できる場合、原則として遺体は司法解剖に回されるのが普通 である。一応遺族の許可を得てから実施されるが、裁判所から「鑑定処分許可状」の発行 を受ければ、遺族の同意が得られなくても職権で強制的に行うことが可能である  また、死因が特定できない変死事件などは、遺族の承諾の必要がない行政解剖という手 順を踏む。  先の、心臓抜き取り変死事件、夢鏡魔人の往来殺人事件などが行政解剖に回されている。  しかし現状として、予算や医師不足などの理由から、警察の死体取扱い件数のほとんど が司法解剖されていない。  また、同様の事情により変死と思われるような状況でも、自殺や事故、心不全で片付け られることもあるともいわれている。  比較的司法解剖率の高い沖縄県警の17.3%を最高に、警視庁に至っては1.8%程度だとい う。  圧倒的に死亡報告が多い東京都がまともに司法解剖などやっていては、それだけで警視 庁予算の大半を飲み込んでしまう。  図表1 図表2  もっともこれらの数字は、あくまで警察庁に報告のあったものという注釈付きである。  警察お得意の隠蔽工作のことを考慮すると、もっとお寒い状況になるのは必定であろう。  既に死亡が確認されている被害者は、遺体搬送専用車に積み込まれ現場を後にすること になる。  ちなみに遺体搬送専用車は、一応緊急自動車指定となっている。  往路は緊急走行が許されても、死亡が確認された帰路は急ぐ必要もないので通常走行と なる。  搬送車を見送る井上課長。  四件の連続通り魔殺人事件。  どう考えても人間の仕業ではなさそうである。 【人にあらざる者】 「やはり陰陽師の手助けを借りるしかないか……」  土御門春代と逢坂蘭子が思い浮かぶ。  ともかく今は全力で凶器を見つけ出さねばならない。  その凶器に【人にあらざる者】が取り憑いていたとしたら、今後も殺人は繰り広げられ る。 「ふ……。俺としたことが」  いつしか妖魔などという摩訶不思議なるものを信じるようになっていた井上課長であっ た。  科学捜査が基本の現代犯罪捜査に【人にあらざる者】を考慮しなければならない事態と は……。
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