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2018年7月27日 (金)

銀河戦記/鳴動編 第十九章・シャイニング基地攻防戦 XI

第十九章 シャイニング基地攻防戦

                   XI  議場の扉が開いてアレックスが入場してくる。  そして被告席に入ると、 「アレックス・ランドール提督。貴官の処分を申し渡す」  審判長が審議の結果を言い渡した。 「貴官の今回の行動は、共和国同盟に対する離反であると言わざるを得ない。命令を 無視してシャイニング基地を撤退し、一時的ながらも占領される結果となり、共和国 同盟への侵略の足掛かりとされる危険性を生じたのである。しかしながら、それは第 十七艦隊及び第八艦隊のクルーの生命を守らんががための人情からきたものと信じる ものである。よって温情を持ってこれを処罰するのを猶予し、その条件としてアル・ サフリエニ宙域にあるタルシエン要塞攻略の任務を新たに与えることとする。もしこ の任務を達しえたならば、貴官の命令違反を不問に帰し、要塞攻略とシャイニング基 地防衛にかかる功績点を規定通りに与えることとする」  会場からため息にも似た吐息が聞こえた。  ニールセンがランドールを陥れようとしたことは誰しもが感じていた事である。そ れが逆の効果として、ランドールの名声を高めたに他ならないことを知り、今また新 たなる活躍の場を与えることとなったのは、ニールセンに対する痛烈なる皮肉な結果 となったわけである。 「以上で審議を終了する。全員解散」  全員起立して敬礼し長官の退室を待ってから、それぞれの持ち場へと戻っていった。  直立不動の姿勢で全員の退室を見届けているアレックスの肩を叩くものがいた。振 り返るとそれはトライトン少将であった。彼は軽く手を振って微笑みながらも無言で 退室した。  会議場を出たところで、ジェシカとレイチェルが待ち受けていた。 「いかがでしたか。会議のほうは」 「一応処罰だけは免れたというところだ。地位も階級もそのままだ。君達の処遇も な」 「よかったですね」 「しかし君達も大胆なことをしてくれたな」 「他に方法がありませんでしたからね」 「首謀者は一体誰だ?」 「リンダとフランソワですよ。リンダがTV局、フランソワが広報部、その他あちこ ち駆けずり回って大車輪で働いてくれました」 「あん? あの二人は犬猿の仲じゃなかったのか?」 「尊敬する提督の危機ということで共同戦線を結んだようです」 「ふうん……意外なこともあるもんだな」 「提督あってこその自分でもありますからね」 「それにしても、本当にシャイニング基地から艦隊を撤退させたのか」 「撤退? しませんよ、そんなこと。苦労して奪還したものをどうして、また敵に渡 す機会を与えなきゃならんのです?」 「TVではそう報道していたようだが」 「それは、リンダがTV局側に手を打って虚偽の報道をぶちかましたんですよ。あの 映像は、策略のために一時撤退したあの時のやつですよ。それをTV局に渡して流し てもらったんです。もっともTV局側にはその事実は伏せてありますけど」 「ふ……。やられたな」 「いやあ、今回のことは、あの二人の手柄です。提督ほどじゃないですけど、二人合 わせて一個艦隊に相当する働きをしましたね。ありゃあ、一介の艦長やパトリシアの 副官にしておくには、もったいないくらいの人材ですよ」 「そうか……かもしれないな」 「だいたい、敵の三個艦隊が迫っているのに、一個艦隊で防衛しろということ事態が 間違っているのです。いくら今までにも数倍の敵艦隊を撃破してきた事実があるとい え、それらはすべて奇襲先制攻撃であったから可能だったのであって、今回のように 専守防衛の任務にまで同様にうまくいくはずがありません。わざと攻守の立場を変え て奇襲攻撃を敢行したから何とか最終的に敵の手から守れたといえるのに」  ジェシカはつぎからつぎに憤懣をぶちまけて喋り続けており、アレックスが切り出 す機会を与えなかった。いつものことではあるが……。 「アル・サフリエニ宙域に向かうぞ」  アレックスは切り出した。 「え!? それってまさか……」 「タルシエン攻略を命じられた」 「また、難題を吹っ掛けられましたね」 「それにしてもタルシエンとは、また……」 「やっぱり、ランドール提督を潰そうという魂胆が見え見えじゃないですか」 「とにかく命令が下された以上、行くしかない」 「せめてもの救いは、防衛なんて堅苦しい作戦じゃなくて、攻撃ってところですね」 「そうだ、レイチェル」 「はい」 「早速、あいつと連絡を取ってくれないか」  あいつとは、ジュビロ・カービンのことである。  闇の帝王とも呼ばれる天才ハッカー。 「分かりました、ついに例の作戦を始動させるのですね」 「そうだ」  アレックスが少佐になったばかりの頃、ダウンダウンの廃ビルの地下室にて交わし た極秘裏の作戦計画が、ついに三年の時を経て発動することとなったのである。

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