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2018年7月19日 (木)

銀河戦記/鳴動編 第十九章・シャイニング基地攻防戦 VII

第十九章 シャイニング基地攻防戦

                VII 「ゴードンを呼んでくれ」 「はい」  スクリーンにゴードンが映しだされる。 「なんでしょうか」 「君の部隊を基地の周辺に展開させて哨戒作戦に入ってくれ」 「了解! 哨戒作戦に入ります」 「たのむ」  スクリーンからゴードンの映像が消えて、降下作戦にはいった第八占領機甲部隊 「メビウス」のモビールアーマー隊の姿が映りだされていた。 「提督、本星より入電。トライトン少将が出ておられます」 「こっちのモニターに繋いでくれ」  指揮制御桿のモニターに切り替わった。 「今、報告を聞いた。ご苦労であった。捕虜の方は輸送船団を向かわせて、本国へ送 還すればよいとして、問題は捕獲した艦船の処理だろう」 「はい、その通りです」 「敵艦船を搾取した場合は、当該司令官の所轄に入ることになっているが……しかし、 六万隻とはな。艦船はともかく乗員の確保がままならないだろう」 「船があっても乗組員がいないことには動かせません」 「乗組員のことはこっちで何とか手配しよう。それよりも、君は軍法会議に諮られる ことになった」 「軍法会議?」 「一時的にとはいえ命令を無視してシャイニング基地を放棄したことによる軍規違反 問題に対してだ」 「そうですか……」 「ともかく至急本星に赴きたまえ」 「わかりました」  やはりというべきか、来るべき時が来たという状況であった。 「提督!」  艦橋の士官達がアレックスのまわりに集まってきた。 「今の話しは本当ですか?」 「軍法会議だとか……」 「そういうことだ」 「そんなのないですよ。シャイニング基地を立派に守り通したじゃないですか」 「安心しろ。軍法会議にかけられるのは、私だけだ。君達は、命令に従って作戦を実 行したのであって、咎められる筋合いは一つもないからね」 「そんな……」 「この作戦を考えたときから、こうなることは想像はしていたさ」 「でも……」 「艦隊の行動に対して責任を取るのは司令官として当然だ。軍に限らず一般の会社だ って、社員が問題を起こせば社長といった重役が連帯責任を取るものだ。そうだ ろ?」 「そりゃそうですが」 「オーギュスト・チェスター大佐」 「はっ」 「私がトランターに行っている間、副司令官として後のことを頼む」 「判りました。おまかせ下さい」  アレックスが軍法会議にかけられるということは、またたくまに第十七艦隊全員の 知るところとなった。それぞれの艦の至る所でその噂話しがささやかれていた。  ここサラマンダーの食堂でもその話題で持ちきりだった。 「冗談じゃないわ。なんで提督が軍法会議にかけられなきゃならないのよ」 「シャイニング基地を放棄して、一時的にせよ敵に占領されたことに対してだろう な」 「提督は、あたし達の命を守るために軍法会議覚悟で、あの作戦を実行したのでしょ う?」 「そうよ。今度はあたし達が提督をお救いする番じゃないかしら」 「どうするの?」 「軍司令部に嘆願書を送るのよ。それでも聞き入れなければ、第十七艦隊全員離反し て抗議行動を起こしましょう。あたし達にはそうする義務があるわ」 「だいたい敵の三個艦隊が迫っているというのに、たった一個艦隊で防衛しろという のが無理な命令だったんだよ」 「提督は、他の提督達から煙たがれていたからな。史上最年少の提督ということで何 かにつけて因縁つけられる。無茶な作戦を押し付けたかと思うと、その作戦を難無く 成功させたらさせたで、今度は任務放棄の廉で責任をとらせようとする。おそらく軍 法会議を持ち出したのは、絶対防衛圏守備艦隊司令長官のチャールズ・ニールセン中 将に決まっているさ」 「どうやら軍部の大半は、提督を潰しにかかっているんじゃないか。ほら提督は、銀 河帝国からの流浪者だっていうじゃないか。それもあるんじゃないかな」 「何いってんのよ!」 「そうよ。人種や身分の違いで人を差別するき?」 「そんなに怒るなよ」 「怒るわよ」 「同盟憲章にだってちゃんとうたわれている条文を忘れたの?」 「それくらい。知っているさ、憲章の第八条だろ」 「なら言わないでよ」 「しかし軍部の連中はそうは思っていない。ランドール提督は、ともかくシャイニン グ基地の防衛を果たしたうえに、敵一個艦隊の搾取に成功して大将を捕虜にした。功 績点はすでに少将の昇進点に達しているという。規定通り少将になれば、すべての准 将が年下であるランドール提督の下で従わなければならなくなる。ガードナー提督を 除けば二十歳以上離れているんだ、耐えられるか?」 「息子におしりぺんぺんされる父親ってところね。少将や中将連中も気がきではない でしょうね。下から猛烈なる追い上げを掛けられていれば」 「提督の罪ってどれくらいになるのかしら」 「う……ん。一度も戦わずに撤退したのだから、いわゆる敵前逃亡ということになる んだろ、やっぱりさ。……となると最悪で銃殺になるかな」 「銃殺ですって!」 「これが連邦軍のヤマモト長官の艦隊だったらまず間違いないところなんだがね。ほ ら、あのナグモ長官が自決したのだってその責任をとったんだよね」 「冗談じゃないわよ」 「提督の味方といえば、トライトン少将とガードナー准将くらいでしょう?」 「ここは一つ、より多くの味方を引き寄せるべきよね」  リンダが何か妙案を思いついたらしく、身を乗り出すようにして言い出した。 「より多くの味方?」 「共和国同盟の一般国民よ」 「そうか、提督は国民の英雄だからな」 「それでね……」

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