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2018年3月18日 (日)

銀河戦記/鳴動編 外伝 ミッドウェイ撤退(6)

銀河戦記/鳴動編 外伝

エピソード集 ミッドウェイ撤退(6)  その頃、スティールの乗艦するシルバーウィンド艦橋。 「先制攻撃に成功しました。今のところ、主導権はこちらが完全掌握しています」  副官が静かに報告する。 「後方の索敵を疎かにするからこうなるのだ。馬鹿な奴らだ」 「敵艦隊の司令官は、イ・スンマン准将ですね」 「聞かない名前だな」 「つい三ヶ月前に艦隊司令官に就任したばかりですからね」 「しかし全然情報がないのはどうしたことか? 司令官になるくらいだから、それなりの 戦功を挙げてのことだろう。何らかしらの情報が入ってきてもいいのではないか?」 「彼は、作戦参謀からの成り上がりですね。名籍簿にも掲載されてはおりません」 「しかし同盟軍の昇進は功績点がすべてじゃなかったのか?」 「司令官が自由に配分できる評価点で昇進したのではないですかね。評価点とは作戦毎に 与えられるもので、それを子飼いの部下に集中的に配分すれば何もしなくても昇進できる というわけです。つまりは自分の取り巻き連中だけを昇進させることもできます」 「無能な連中を昇進させてもしようがないだろうに」 「まあ、その最たるものがニールセン中将ですかね。自分の気に入った配下の者ばかり昇 進させて、気に食わない将兵は最前線送りして葬り去る」 「奴自身もそうやって昇進したのだろうな。ゴマすりが得意なだけだが、一度将軍の位に 就いてしまえば後は自由勝手だ。戦闘は無能で、口ばかり達者な連中が寄り集まっている。 それが絶対防衛艦隊の諸提督達だ。要は直接の戦闘の起きない後方で、のほほんと暮らし ている連中の馬鹿さ加減だな」 「最前線に送り込まれる将兵はたまらないですね」  オペレーターが警告を発した。 「敵艦隊、射程内に入ります」 「そろそろ相手も本腰入れて反撃してくるぞ。これからが正念場だ」  姿勢を正して指揮艦席を座りなおすスティールだった。  先手を取られながらも徐々に陣形を整えつつある同盟軍第五艦隊。 「敵艦隊、粒子ビーム砲の射程に入りました」 「よおし! 反撃するぞ。艦隊数ではこちらが勝っているのだ、冷静に対処すれば何のこ とはない」  勇躍全艦が一群となってスティール艦隊に向かった。 「粒子ビーム砲、臨界に達しました」 「撃て!」  全艦が一斉に粒子ビーム砲を発射する。  両艦隊同士のビーム砲の撃ち合いが開始された。  双方共に次々と撃沈大破され、損害が広がっていく。  その頃、スティールの指揮下にある第二分隊は丁度第五艦隊の背後を襲う位置に配して いた。  スティールの考えによれば、まともに戦っては消耗を早めるだけなので、艦隊を二分し て別働隊で敵の背後から攻撃を加え、敵艦隊の攻撃目標を散らす作戦だった。  分隊指揮官のカウパー・チャコール少佐が乗艦している戦艦ワシントン。 「敵艦隊、射程距離まで、〇・七光秒」 「ふん。敵艦隊はまだこちらに気付いていないようだな」 「股間を膨らませて、冷静な判断力を失っているのでしょう」 「言い得て妙だな。血の気が違うところに回っているようだ」 「敵艦隊、射程内に捕捉しました」 「よし。全艦、砲撃開始」  さらなる敵艦隊の出現に一時騒然となる旗艦空母アン・ジュングン艦橋。 「後方より別艦隊接近!」 「伏兵が潜んでいたか。艦数は?」 「およそ三千隻」 「いかがなさいます」 「かまわん。敵は少数だ、恐れることはない。まずは前面の艦隊を叩く」  この時点での裁量としては最善であろう。  兵力を分散するのは得策ではない。後方からの攻撃により多少損害は増えるが、まずは 前面の敵を殲滅することの方が大切だと判断されたのである。

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