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2017年10月16日 (月)

梓の非日常/第二章 黒帯?

梓の非日常/第二章 スケ番グループ(青竜会)

(五)黒帯?  スーパーリンペイの演技が終わった。  絵利香から手渡されたタオルで汗を拭っている梓。他の一年生が息を切らしている のに、呼吸は整っているし道着さえも少しも乱れていない。 「一年生は、ここで少し休憩します」  さすがに壱百零八手の後に、稽古を続ける体力は、一年生にはない。 「今回教えた型は、スーパーリンペイと言って、空手の型でも最高難度と言われてい ます。今日明日で覚えられるものではないし、高校在学中にも覚えられるとも限りま せん。ではどうして教えたのかというと、型とはどういうものかを、身を持って感じ てもらうためです。次回の稽古からは、やさしい基本の型から順次教えていくつもり です。ではしばらくは、端によって先輩方の練習を見学していてください」  梓のもとに下条が歩み寄ってきた。 「ちょっと、真条寺君」 「はい?」 「君は、空手の経験があるのかい?」 「いいえ」 「しかし、君の動きを見ていると鍛練の形跡がある。それも沖縄唐手の鍛練法とみた が」  ……ええ! ちょっと動きを見ただけで、唐手のことを見抜くなんて、この先生た だものじゃないわ…… 「はい。空手の経験はありませんが、合気道と沖縄古武術の稽古をしておりました」 「どうりで、動き方が手慣れていると思ったよ」 「先生こそ、一目で見抜くなんて、よほど研究なされているんですね」 「それなりにね……だてに空手部の顧問をしていないってところかな」  梓が研究といったのは、下条教諭がとても武術をやっているようには思えなかった からだ。武術家というよりも研究家として、顧問を引き受けていると思っていた。 「それと真条寺君」 「はい?」 「次の稽古からは、黒帯絞めてきていいからな」 「どうして、黒帯と?」 「体道、つまり君の身のこなしを見れば判るよ。だいたいからして、道着は着古して いるのに新品の白帯なんておかしいだろ」 「あはは、やっぱり判ります? 本当は道着も新調しようかと思ったんですけど、着 慣れているものでないと十分な動きができないから。新品のものってごわごわしてま すからね。白帯は持っていなかったので、仕方なく新規購入しました」 「頭かくして尻かくさずだな。正直に、合わせ段位でいくらの免状を持ってる?」 「三段です。合気道三段、古武術の方は民間伝承なので正式な段位というものはあり ません」 「そうか……とにかく許すから黒帯絞めてこい」 「どうして黒帯にこだわるんですか? 空手は始めたばかりです。白帯が自然だと思 いますけど」 「それはだなあ……」  と切り出そうとした時、横合いから藤沢が口を挟んだ。 「黒帯絞めた女の子がいれば、新入部員が増えるからですよ」  いつの間にか、梓を取り巻くように部員達が集まって来ていた。口々に質問をあび せかけている。 「へえ、梓ちゃん。黒帯だったんだ」 「どうして隠してたの?」 「え? だってえ……」 「しかし、有段者の女の子が空手部に入ってくれるなんて、願ったりかなったりだよ。 ね、せ・ん・せ・い」 「あのなあ、おまえら。稽古中だろが!」  一年生担当の藤沢はともかく、稽古していたはずの二・三年生までが集まってきて いた。 「この際、固いことは言いっこなしだよ。先生」 「あのですねえ……。空手については無段なんですから、白帯でいいじゃないですか。 まずは級位認定から一歩ずつやりましょうよ」 「そうは言ってもなあ……」  ひとえに黒帯を勧めるのはやはり新入部員勧誘のためだろう。  そもそも梓の空手は喧嘩空手で、正式に習って体得したものではないし、認定試験 も受けていないので、白帯黒帯以前の問題である。 ちなみに段位認定を取得するには、各都道府県空手道連盟公認段位審査会に合格する こと。 3段(少年段位2段)までは、以下のものを体得する必要がある。 基本:外受逆突、手刀受逆突、前蹴逆突 形 :2つの形   全空連指定形1つ/自由形(但し、ピンアン・平安・鉄騎・サンチン・ゲキサイ   を除く、JKF指定型かWKF得意型リストから受審者が選択)計2つの形 組手:自由組手又は約束組手(2回) 少年初段は基本形と全空連指定形1つ 全空連指定形は ●セーパイ(剛柔会) ●サイファ(剛柔会) ●ジオン(松濤館) ●カンクウ大(松濤館) ●セイエンチン(糸東会) ●バッサイダイ(糸東会) ●セイシャン(和道会) ●チントウ(和道会)

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