妖奇退魔夜行/血の契約 其の質
陰陽退魔士・逢坂蘭子/血の契約 其の質
国語教務室に入る二人。
「お茶を入れるわ。そこに座ってて」
部屋の中央に小さな食卓のようなテーブルと椅子が置かれていた。
部屋に入った時から違和感を感じていた蘭子であるが、すぐに理由が判った。
四角いテーブルというものは、その角を部屋の四隅に合わせるようにするのが普通であ
る。
しかしこのテーブルは、ほぼ正確に四十五度となるような角度に置かれていた。
(まるで魔方陣だな)
すなわち部屋の四辺四角と、テーブルの四辺四角とで、奇門遁甲八陣図のような図形を
描くような配置になっている。
改めて周囲の本棚を見ると、日本現報善悪霊異記・太平百物語・行脚怪談袋・葛の葉・
山海経・封神演義という書物が並んでいる。
いずれも妖怪や妖獣、奇跡や怪異現象といった内容のものが記されているものばかりだ。
「ミルクを切らしているので、レモンティーで許してね」
とテーブルの上に三客の紅茶カップを置く弥生教諭。
「さあ、どうぞ」
勧められて一口すすって、
「おいしい!」
と感嘆の声を漏らす順子だった。
「弥生先生、私達を呼んだわけを聞かせてください」
蘭子が用件を切り出した。
「そうね。そろそろいいわね」
というと棚から風呂敷包みを手に取り、テーブルの上に置いた。
ゆっくりと包みを解く弥生教諭。
中から現れたのは古ぼけた祠。校舎裏の茂みにひっそりと安置されていたものだ。
「こ、これは……」
順子の表情が明らかに曇った。
「どう? 見たことあるかしら」
椅子を引いて立ち上がる順子。
いつの間にか、部屋全体が妖しく輝いていた。
「結界の間か」
「その通り。逃げられはしないぞ」
「こしゃくな!」
順子が鋭い爪を立てて蘭子に襲いかかる。
「なんでこっちに来るのよ」
とっさに守護懐剣の虎徹で受け止める。
見た目には普通の短剣ではあるが魔人が封じ込まれているので、妖魔に対しては絶大な
る威力を発揮する。
矛先を変えて、弥生に襲いかかる順子。
しかし、弥生が手を前にかざしただけではね飛ばしてしまう。
「おまえは人間の首筋にその鋭い爪を突き立てて精気を吸い取ることしかできない。自分
を守ったり他を攻撃する能力は一切持ち合わせてはいない。こうして篭の鳥となっては何
もできない」
くやしさを表情いっぱいに浮き上がらせる順子。
「唯一の能力といえば、おまえは不死ということだ。たとえ一端は死んだように見えても
やがて再び復活する。だから、おまえへの対処法は封印することしかない。蘭子! 祠の
中から狐像を取り出して」
言われた通りに狐像の像を取り出す蘭子。
「…………」
蘭子には意味不明の呪文を唱えはじめる弥生。
苦しみ始める順子。
やがてその身体が輝きだしたと思うと、狐像の中へと吸収されてしまった。
弥生は狐像を祠の中に納めながら言った。
「蘭子。あなたの持っている呪符を出して!」
「え? ああ……」
懐から呪符を取り出す蘭子。
「これね」
それは祠に貼られていたと思われる呪符だった。妖魔について調べようとしたのである
が、祖母の晴代に尋ねても結局判らずじまいだった。
弥生は蘭子から呪符を受け取ると、掌の上に置いて呪文を唱えてから、ふっと軽く息を
吹きかけると、呪符は宙を舞って祠の扉に貼り付いた。
一瞬、悲鳴が聞こえたような気がした。
「終わったわね」
ため息をつく弥生。
と同時に、結界陣が解けた。
床に倒れている順子を抱き起こす蘭子。
「良かった。生きているわ」
「しばらくすれば目が覚めるだろう」
国語教務室に入る二人。
「お茶を入れるわ。そこに座ってて」
部屋の中央に小さな食卓のようなテーブルと椅子が置かれていた。
部屋に入った時から違和感を感じていた蘭子であるが、すぐに理由が判った。
四角いテーブルというものは、その角を部屋の四隅に合わせるようにするのが普通であ
る。
しかしこのテーブルは、ほぼ正確に四十五度となるような角度に置かれていた。
(まるで魔方陣だな)
すなわち部屋の四辺四角と、テーブルの四辺四角とで、奇門遁甲八陣図のような図形を
描くような配置になっている。
改めて周囲の本棚を見ると、日本現報善悪霊異記・太平百物語・行脚怪談袋・葛の葉・
山海経・封神演義という書物が並んでいる。
いずれも妖怪や妖獣、奇跡や怪異現象といった内容のものが記されているものばかりだ。
「ミルクを切らしているので、レモンティーで許してね」
とテーブルの上に三客の紅茶カップを置く弥生教諭。
「さあ、どうぞ」
勧められて一口すすって、
「おいしい!」
と感嘆の声を漏らす順子だった。
「弥生先生、私達を呼んだわけを聞かせてください」
蘭子が用件を切り出した。
「そうね。そろそろいいわね」
というと棚から風呂敷包みを手に取り、テーブルの上に置いた。
ゆっくりと包みを解く弥生教諭。
中から現れたのは古ぼけた祠。校舎裏の茂みにひっそりと安置されていたものだ。
「こ、これは……」
順子の表情が明らかに曇った。
「どう? 見たことあるかしら」
椅子を引いて立ち上がる順子。
いつの間にか、部屋全体が妖しく輝いていた。
「結界の間か」
「その通り。逃げられはしないぞ」
「こしゃくな!」
順子が鋭い爪を立てて蘭子に襲いかかる。
「なんでこっちに来るのよ」
とっさに守護懐剣の虎徹で受け止める。
見た目には普通の短剣ではあるが魔人が封じ込まれているので、妖魔に対しては絶大な
る威力を発揮する。
矛先を変えて、弥生に襲いかかる順子。
しかし、弥生が手を前にかざしただけではね飛ばしてしまう。
「おまえは人間の首筋にその鋭い爪を突き立てて精気を吸い取ることしかできない。自分
を守ったり他を攻撃する能力は一切持ち合わせてはいない。こうして篭の鳥となっては何
もできない」
くやしさを表情いっぱいに浮き上がらせる順子。
「唯一の能力といえば、おまえは不死ということだ。たとえ一端は死んだように見えても
やがて再び復活する。だから、おまえへの対処法は封印することしかない。蘭子! 祠の
中から狐像を取り出して」
言われた通りに狐像の像を取り出す蘭子。
「…………」
蘭子には意味不明の呪文を唱えはじめる弥生。
苦しみ始める順子。
やがてその身体が輝きだしたと思うと、狐像の中へと吸収されてしまった。
弥生は狐像を祠の中に納めながら言った。
「蘭子。あなたの持っている呪符を出して!」
「え? ああ……」
懐から呪符を取り出す蘭子。
「これね」
それは祠に貼られていたと思われる呪符だった。妖魔について調べようとしたのである
が、祖母の晴代に尋ねても結局判らずじまいだった。
弥生は蘭子から呪符を受け取ると、掌の上に置いて呪文を唱えてから、ふっと軽く息を
吹きかけると、呪符は宙を舞って祠の扉に貼り付いた。
一瞬、悲鳴が聞こえたような気がした。
「終わったわね」
ため息をつく弥生。
と同時に、結界陣が解けた。
床に倒れている順子を抱き起こす蘭子。
「良かった。生きているわ」
「しばらくすれば目が覚めるだろう」
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